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「日本で大停電は起こらない?」

2003.11.15
谷口治人・狛江研究所副所長
谷口治人

たにぐち はるひと
財団法人電力中央研究所 狛江研究所副所長
1950年長崎県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了。1975年電力中央研究所入所。電力系統の計画・運用・制御に関する研究、新技術の適用評価などの研究に従事。同研究所電力システム部長を経て、2003年より現職。

「大停電、日本は大丈夫か」


ブラックアウト。2003年は8月14日の北米大停電をはじめ、8月28日にロンドン、9月28日にはイタリアでも大停電が起き、また中国・上海でも停電が頻発している。大停電はなぜ起きたのか? 日本では大丈夫なのか――電力中央研究所の谷口治人・狛江研究所副所長に訊いた。

──世界で大規模停電が相次ぐ状況をどう見ているか? //////////

確かに今年の夏は停電が相次いだが、共通の背景があるかどうか。英国は送電設備の故障が原因だし、上海は電力不足に伴う供給制限によるものだ。一方、北米とイタリアは電力融通の問題、つまり広域運営が盛んになったことに加え、自由化が要因になった面もあるかもしれない。ただ各国で停電が相次いだのは、航空機事故がなぜか立て続けに起きるのと同じく、たまたま重なっただけではないだろうか。

──それにしても北米大停電は規模も大きく衝撃的だった。一体どのようにして起きたのか? //////////
発端は、停電発生の2時間半前、13時30分頃、五大湖の一つエリー湖畔に位置する、オハイオ州クリーブランドのイーストレイク石炭火力発電所が電力系統から脱落、つまり切り離されたことに始まると言われている。このためクリーブランドに電気を送る別の送電線に負荷がかかり、15時頃からオハイオ州内の送電線が次々に送電をストップしていった。電気は需要地に向かって流れていくので、16時過ぎにオハイオ州南部からの送電が止まると、次に西側――ミシガン州経由で流れようとしてミシガンの系統に影響を与え、送電線が次々に遮断され、発電所も停止。送電系統がさらに不安定になるなかで、ミシガン州経由の供給ルートが絶たれ、今度はペンシルベニアやニューヨーク州の方へ大きく東に迂回して流れようとし、各州間の連系線が連鎖的に遮断。遂に16時10分頃、米国北東部とカナダ南東部一帯が停電、約5000万人に影響を与える事態になってしまった。

──なぜ送電線が遮断されたり、発電所が脱落していったのか? //////////
通常、送電線に急激に過剰な電気が流れるなど異常が起きると、影響が発電所に波及するのを防ぐため発電所を系統から切り離す。さらに系統の異常が他の地域に波及しないよう、送電システム自体を遮断する。本来それで問題地域が切り離され、事故拡大が防げるはずなのに、今回は瞬時に拡大してしまった。原因自体は現在調査中なので、明確なことは言えないが、電圧異常や過負荷、さらには停電に至る最終段階では安定度の崩壊や周波数の異常など、複合的な系統異常現象が起きていたことが考えられる。

──しかし、そこに至るまでの段階、こんなに広域に波及する前の段階で、なぜ食い止められなかったのか? //////////
もともと電力系統は、発電所や送電線のどこか1カ所に不具合が生じても、系統全体としては安定して機能するよう「N-1の信頼度基準」に基づいてつくられている。だからイーストレイク発電所の脱落だけでは、送電線遮断につながるような事態には至らない。
にもかかわらず連鎖的遮断に至ったのは、そのあと何らかの原因で起きた最初の送電線遮断に、系統運用者が気づかなかった可能性がある。遮断を知らせるアラームが鳴らなかったとも言われており、もしも系統運用者が状況を把握していれば、初期の段階で、発電出力を増やすなど、対策がとれたかもしれない。
だけどそのとき、自由化も関係してくる。この地域では、個々の発電所ごとに発電契約を結んでいるため、別の発電所を動かそうとすれば、契約事項の変更が必要になる。系統運用者に緊急時という認識がなければ既存契約優先に走ったかもしれず、発電出力増加の要請が遅れたことが考えられる。
一方、発電出力を増やそうにも余裕がない場合は、一部を停電させることで広域に波及することを避ける方法を採るが、どうやらこれもしなかったらしい。
また日本の場合は、送電線の潮流の大きさを自動監視し自動的に遮断する「事故波及防止リレー」をあちこちにつけ、事故の拡大を防いでいるが、今回の事故を見る限り、そういうシステムが備わっていなかったか、正常に動作しなかったか、あるいはここまでの事態を想定していなかったことが考えられる。

──1日以上停電したままの地域もあったが、復旧はどう進んだのか? //////////
供給エリアを区切って、需要に見合った量を発電していくわけだが、今回は停電エリアが広大で、停止していた発電所も100基以上。復旧は並大抵ではなかったと思われる。順次、発電所を立ち上げながら送電していくので、送電網全体で常に適切な量の電気が流れるよう調整しないといけないし、その間も刻々と需要が変わるので、周波数を維持するだけでも大変。そうやってエリア内を復旧させてから、隣接する地域間の送電線を結んでいったというわけだ。

──日本で同様の停電事故が起きる心配はないのか? //////////
その可能性は極めて小さい。
なぜなら、1つは電力系統の構成が違う。北米は内陸部に大きな河川や湖があり、大都市や発電所も多い。これらの発電所や都市を送電線で結んでいけば、電力系統は必然的に複雑なメッシュ状になり、事故波及防止を考えようにも、どの線を切ればいいかわからない。一方、日本は都市も発電所もほとんど沿海部に立地しているから、電力系統は極めてシンプル。特に電力会社間は基本的には1点連系で、しかもあらかじめ、事象によってどこを切り離すかを取り決めているから、停電が他地域に波及することは防げる。
2つめに、北米では自由化によって供給責任主体が不明確になってしまった面がある。採算を考えると電力流通設備への投資インセンティブは働きにくいし、設備が老朽化していたことに加え、関係する発電事業者が多く、系統運用は複雑化。そこへもってきて緊急時の系統運用者の権限が不足しており、対応が遅れた面もあるだろう。日本では「責任ある供給主体」としての電力会社の形態は残されることになったので、緊急時の判断などは問題ないと思われる。

──では今後、日本が自由化を進めるにあたって、北米大停電から学ぶことは? //////////
その可能性は極めて小さい。
今後、自由化範囲の拡大に伴い、新規参入者の電力系統への接続が増えていったとき、どの発電所をどれだけ動かし、どの送電線を使い、どう電気を流すか、という潮流断面を決めることはますます難しくなる。あらかじめ需要想定を行った上で、時々刻々変わる需要に合わせて周波数や電圧が常に一定になるよう、電気の流れをコントロールし細かく調整していくという、日本の電力系統の制御・運用技術は世界に冠たるものだけど、それでも今後、電力系統につながる様々な主体がそれぞれどういう役割なり責任を果たすかをきちんと決めておかないと安定供給はおぼつかない。それを担保できる仕組みにしないといけない。もう一つは長期的かつ広域的な視点が働くように。自由化になると流通設備形成へのインセンティブは働きにくいが、安定供給に流通設備の維持・保全は非常に重要であり、公益性と採算性のバランスが取れる仕組みをつくりあげていかなければならない、と思っている。■



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