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内田 樹
内田 樹

うちだ たつる 神戸女学院大学文学部総合文化学科教授(フランス現代思想、映画論、武道論)
1950年東京都生まれ。東京大学文学部卒、東京都立大学大学院人文科学研究科仏文学専攻博士課程中退。東京都立大学助手、神戸女学院大学助教授を経て、教授。著書「ためらいの倫理学」「『おじさん』的思考」「寝ながら学べる構造主義」「大人は愉しい─メル友おじさん交換日記」「レヴィナスと愛の現象学」など。合気道6段。

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■おじさん的常識(2)
「対話について」

2002.12.01

あなたは対話が足りないとか、他者との対話に開かれていないとか、そういうことをうるさく言う人間が、最近私のまわりに多い。勝手に手紙やメールを送りつけてきて、そこに私の批判を書き連ね、返事を出さずにいると、そう言って怒り出すのである。

ずいぶん勝手な人たちである。
私はそういう人間を相手にしないことにしている。
「対話」というのは、そういうものではないからだ。
「自分とは違うものの見方をする人間」と胸襟を開いて語り合うこと、それこそが対話でしょう、という人がいるが、それは短見というものである。いくら他人が自分とは違うものの見方を語ってよこしても、それだけでは対話は始まらない。

対話が始まるためには条件がある。
その人がたしかに私とは違うものの見方をしているのだが、どうもその人のものの見方の方が、私の見方よりも広く、遠く、深いように直感せられる場合。これは「師」との対話である。

その人が私と似たような知的形成過程をたどってきており、いまも似たような状況下で似たような問題を抱えている場合で、なお私とものの見方が違う場合、どうしてそういうふうに違ってきたのか、どのへんが同じなのか興味が湧いてくる。これは「友」との対話である。

私とは知的形成過程も違うし、抱えている問題も違うし、その考え方がさっぱり深いようにも広いようにも思えない人間と「さあ、対話をしろ」と言われてもそれはご無理というものである。

しかし、それでもなお必死に言葉を語らねばならない局面というものもある。

それは何を考えているのかさっぱり分からないし、まるで共感もできない他人なのであるが、そのまま聞く耳持たずに放置しておくと、こちらに災いを為す可能性がある場合である。その場合にも言葉が必要となる。

しかし、これは厳密な意味での「対話」ではない。それはむしろ太古的な意味での「祝」(しゅく)に近い。
「祝」とは古くは土地の異神の祟りを怖れ、邪悪なものを鎮めるために、「ことば」を贈り物に捧げることを意味した。そのような「祝福」を送って災禍を未然に防ぐ、という言葉のやりとりもある。

国と国のあいだのコミュニケーションも、「対話」だけから成り立つわけではない、と私は考えている。何を考えているのかよく分からないけれども、災いをなしそうな国(どこの国とは言いませんけれど)に対しては、「対話」を成り立たせるより先にまず「祝福」を送る、というのが人類が古来採用してきた便法である。だから、私も「あ、これは怒らせるとやばそう」と思う人間からのメールに対しては、とりあえず「祝福」の言葉を送り返すことにしている。■



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