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森岡 正博
森岡 正博

もりおか まさひろ  大阪府立大学総合科学部教授(生命論・哲学・現代思想)
1958年高知県生まれ。東京大学文学部倫理学科卒、同大学院人文科学研究科倫理学専攻博士課程単位取得退学。東京大学助手、国際日本文化センター助手、ウェスリアン大学客員研究員、大阪府立大学助教授を経て、98年より現職。学際的視点から社会と人間の問題を扱う。著書「生命観を問いなおす」「生命学に何ができるか」「意識通信」「自分と向き合う知の方法」「宗教なき時代を生きるために」「生命学への招待」「脳死の人」、共著「ささえあいの人間学」「電脳福祉論」「対論 脳と生命」など。

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■日常の哲学的考察から見えるもの(3)
「犬に服を着せる人間の執念はどこまで行くのか」

2003.07.01

最近、犬をつれて歩いている人が、やたらに多いような気がする。私は大阪市のど真ん中に住んでいるが、都市の中心部に、こんなに犬がいるというのは、もの珍しさを超えて、何か奇妙な感じさえ受ける。若者でにぎわう堀江地区でも、あちこちで犬にすれ違う。中年男女よりも、犬のほうが多いのではないかと思われる。

街を注意深く観察してみると、犬と一緒にお茶を飲めるカフェが、あちこちに出現していることが分かる。おしゃれな人間用カフェや雑貨店のとなりに、これまたおしゃれなドッグカフェがいくつもオープンしている。中をこわごわ覗いてみると、犬を連れたお客さんがたくさん入っている。犬たちは、飼い主の足元にお行儀良く座っていて、お茶を飲む人間たちの様子をじっと見守っている。犬とお茶を飲む人々の姿は、どこか幸せそうである。犬と一緒に行動できるということ、そして自分の犬を見せびらかせるということが、精神状態をきわめて安定させているのだろう。

街ゆく犬たちを観察していて、もうひとつ気になったことは、毛を盆栽のように刈り込まれた犬や、不思議な洋服を着せられた犬が、けっこう多いということだ。知り合いの若い人に聞いてみたら、犬の美容院なるものがあちこちにあって、そこで毛を刈り込んでいるとのこと。また、犬の洋服を自作するためのカルチャーセンターまで開かれているそうだ。そうか、自分の赤ちゃんに自作のお洋服を作って着せる感覚なのだろうな。

話を聞いていくとさらに興味深いことが出てきた。いま流行っている犬として、「トイプードル」というのがいる。それは、赤ちゃんのようにかわいい超小型犬で、ぬいぐるみにそっくりだ。そして、このトイプードルの毛を、ちょうどティディベアのような形にカットして、連れ歩くのが大受けしているというのだ。

私はまったく知らなかったので、「そんなのを飼いたいの?」と聞いてみた。そしたら、その若者は「かわいいからほしい」と答えて、さらにこのように付け加えた。「できることなら、小さくて、赤ちゃんのようなままで、ずっと成長が止まっていてくれるような犬がほしい」。このことばを聞いたとき、私は何かを一瞬にして理解した。犬に洋服を着せたいと思う人間の執着は、最終的にはここに行き着くに違いない。そしてそれは、近い将来の遺伝子工学によって可能になることだろう。子どものままで成長しないペットを、遺伝子操作によって作成することは、クローン技術時代に、それほど難しいことではないはずだ。その技術は、まずペットで応用され、社会に爆発的に受け入れられ、そして、その先に待っているのは__。その答えはここであらためて述べるまでもないだろう。■



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