Insight時代を解くキーワード Presented by 関西電力
| HOME | このサイトについて | メルマガサンプル | 談話室 | 配信申込・解除 | お問い合わせ・ご意見 |
関西電力HPへ
Main Column Break Close up エナジー News Clip 関西電力 講堂(イベント/セミナー)
 

Break
 
麻生 圭子

あそう けいこ エッセイスト
1957年生まれ。作詞家を経て、現在はエッセイスト。96年に京都在。99年より築七十年の町家に移り住む。主な著書には「東京育ちの京都案内」「東京育ちの京町家暮らし」「極楽のあまり風」(すべて文藝春秋)、新刊に「生活骨董」(PHPエル新書)がある。


■流行前線──千年の都から(5)
「言わぬが花」

2002.10.15

わびさびの茶の湯の道にも裏表

こんな言葉を聞かせてくれた老人がいました。京都の方です。その方、何かをおっしゃったわけではないのですよ。ただ、話の流れに、すーっとそんな句(川柳?)が出てきた。別の若い人が、茶碗の話だったか、華美なお茶会の話だったか、そんな話をしているときでした。で、ご老人、にやり笑いながら、昔から、そんな言葉がありましてな、と言ったあとは、さっさと話題を変えてしまいました。うまい、と思いました。茶道には、裏千家と表千家がありますよね。でも、私たちはその場の流れで、誰もがそういう意味合いにはとらなかった。溜飲を下げて、一件落着といった塩梅でした。

悪口、噂話、決して私も嫌いじゃありません。でも、それをしたあと、きいたあとは、必ず、なさけない気分になってしまう。あーあ、言わなきゃよかった、つまらないことを口走ってしまった、くだらないことを聞いてしまったと、後悔することしきりです。

こういうことって、一度、耳に入ってしまうと、なかなか抜けないんですよね。そのくせ、所詮、悪口、噂話です、どこまでが本当なのか、わかったもんじゃない、知識にもならない情報です。その点、「茶の道にも裏表……」には、それぞれの真実がある。心でどう感じようが、その人の自由、口にしなければ、それはその人だけの真実でしょう。

もう一つ、こんなこともありました。あるご老人と、ちょっとした展示会に行ったときのことです。説明の人の話で、腑に落ちないことがあったので、つい質問してしまったのです。それに対しての返答は、やはり納得できるものではなかったのですが、それを蒸し返すのもね、と曖昧に頷いていたら、ご老人、私の手をさっと引き、こう耳打ちした。「はいはい、と聞いといたらよろし。あんたが言うてるのが正しい。間違うたこと、喋ってるな、思いながら、上手に頷いてなはれ」

言わぬが花、言わぬが一枚、上手。このへんが、私の好きな京都人の処世術です。■



Columnカテゴリ検索
政治・外交
経済・経営
社会・生活
文化・文明
科学・技術
電力・エネルギー
関西
サイト内全文検索
最近のBreak

Insight時代を解くキーワード
Copyright (C) 2002-2008 KEPCO THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.