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麻生 圭子

あそう けいこ エッセイスト
1957年生まれ。作詞家を経て、現在はエッセイスト。96年に京都在。99年より築七十年の町家に移り住む。主な著書には「東京育ちの京都案内」「東京育ちの京町家暮らし」「極楽のあまり風」(すべて文藝春秋)、新刊に「生活骨董」(PHPエル新書)がある。


■流行前線──千年の都から(3)
「ごくろうさまは失礼か」

2002.08.15

悪気はないとわかっていながら、ときおり相手のことば使いに、不快感をどうしても感じてしまうことがある。

最近、ある人と対談というものをした。一般の雑誌ではなく、いわゆる広報誌というものだ。毎回、各界からゲストを迎えての対談ページであるらしい。 現在、私は、京都に住んでいるので、東京に出向く、というかたちになった。そういうことを慮ってくれての、ことばだったのだと思うが、挨拶のときに、対談相手から「ごくろうさま」と、言われた。私は、目がテンになった。違和感を覚えたのだ。

ごくろうさま、という言葉は、目上の者が、目下の者をねぎらうときに用いることば、という意識があったからだ。 それも年が上とか、その世界での先輩というような上下関係ではなく、雇用関係において、はっきり上下関係が定まっている場合である。じゃないと、少なくとも私は、失礼な感じがする。私はその人のために、東京に出向いてきたわけではない。それなりの謝礼の下に、自分の意志で受けた仕事だ。ねぎらわれる筋合いはない。

と、まあ、思ったわけだ。

じゃ、どういえばいいのか。

先日、読んだことぱ使いの本では、具体的なことを述べよ、と書かれてあった。「今日は京都から? 暑かったでしょう。こちらの都合で、わざわざお呼び立てしてすみませんでしたね」とか、そんなところだろうか。立場ある人に、そんなこと言われたら、私なんか単純だから、いっぺんでファンになったと思う。おまけに口も軽いから、このあいだ、何々の何とかさんに会ったんだけど、謙虚ですごくいい人だったよ、と言いふらしたと思う。

蛇足だが、その本には、ほかに「お疲れさま」も、上司はもとより、先輩にも、用いてはいけない、とあった。疲れたね、というのは、やはり目上の者が使う、ねぎらいのことばなんだそうだ。上下関係に厳しいといわれる芸能界でも、最近の若いコたちは、大先輩に向かって「お疲れさまでしたー」と、元気に声をかけ、先に帰っていく、と六十歳を過ぎた芸能人が苦笑していた。

さて、前述の対談のお相手は、国会議員であった。党の広報誌の仕事。毎回、ゲストに合わせて、国会議員も替わるんだそうだ。その代議士さんは、決して感じの悪い人ではなかった。横柄でもなかった。ただ、私が「何々センセイ」と呼ばずに、「何々さん」と呼んだときの、ん? という顔が、妙に印象に残った。ことばなんかただなんだから、「センセイ」と無難に言っておけばよかったかな、と思ったが、後の祭り。スタッフたちにエレベーターまで見送られ、さっそうとお帰りになるうしろ姿を見つつ、赤絨毯の上を歩き慣れている人なんだなあ、と思ったのだった。■



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