MyProjectStory 電力全面自由化に向けて

変革の波を乗り越える、前例のない「新電力」と「エリア外」への挑戦。
山本健太 / Yamamoto Kenta(2003年入社・経済学部卒)

お客さま本部附(株)関電エネルギーソリューション出向 新電力本部 販売計画部 課長 兼 総合戦略チーム 課長

入社以来、営業部門一筋で、BtoCの営業活動、BtoCの戦略策定、出向先でのBtoBの戦略策定&営業活動とキャリアを重ねている。
自身のこだわりは「どれだけお客さまのことを考えられるかどうか」、仕事の醍醐味は「目標を一つにチームで達成する感動」と語る、見た目はクールフェイスだが、実はハートフルな熱血漢である。

日本のエネルギー産業は今、変革の波の真っ只中にある。
第一の波は、2000年に始まった電力小売の「一部自由化」(大口需要家向け高圧自由化)であり、さらに2016年には一般家庭や
小規模商店も含めた「全面自由化」(完全小売自由化)による、第二の波を迎えようとしている。
押し寄せる荒波を乗り越えながら、その先にいかに確かな未来への航路を切り拓くのか。
関西電力は、これまでの常識にとらわれない挑戦へと舵を切っている。
その一つが、山本健太が挑戦する「首都圏での電力小売販売」プロジェクトだ。

01.これまでのキャリアを振り返って

「量」から「最適な使い方」へ。新たな営業戦略を策定

「オール電化や省エネルギーの提案営業がしたいという想いで入社しました。
そして、入社後はずっと、一般のご家庭向けにBtoCの仕事をやっていくんだ、と思っていました。」

12年目を迎える山本健太のキャリアは、願い通りにオール電化の営業販売からスタートしたが、その後転機を迎える。
本社の営業計画グループに異動し、営業部門全体を見渡した営業戦略の策定に携わることになったが、その直後、東日本大震災が発生したのである。

「関西電力にとって、未曾有の大震災は営業方針を大きく転換する契機になりました。電気をたくさん使っていただく営業から、最適な使い方をご提案するコンサルティング営業へ、『エネルギーマネジメント』という新たな方向性を決めていくことに、とてもやりがいを感じていました。」

一方で、山本は「仕事の質」の変化にも直面する。新たな営業戦略も全社の営業部門が行動に移さなければ、まさに「絵に描いた餅」に終わり、何も変わらない。
「まさに営業最前線に立つ営業担当と議論を繰り返し、何度も営業戦略を練り直すことで、実効性のある戦略に変わっていくことの充実感を感じました。」

「私自身が動くだけなら簡単ですが、いかに周りの人を巻き込んで動かせるか。のめり込んでしまうタイプの私にとって、一歩退いて客観的に全体を俯瞰して考えることが必要でした。もう一つ、意思疎通をしっかりと図り、想いが伝わるまで伝え続けることの大切さも学びました。どちらも難しいことですが、それができるようになって、これまでに味わえなかった面白さに気づきました。」

そして、新たな営業戦略の浸透に確信を抱くようになった数年後、山本はさらにキャリアステップを駆け上がっていく。 それは「関西電力のグループ会社である関電エネルギーソリューションが、エリア外である首都圏で電力供給サービスを開始する」という、前例のない挑戦のステージだった。

02.電力全面自由化時代に向けて

関電グループに新たな収益の柱を育てる、未来志向の挑戦

「お客さま満足No.1企業」――。

関西電力が目指すミッションは不変でも、時代や環境の変化に適応し、より良いあるべき姿へと変わっていく必要がある。
電力小売全面自由化時代の到来に先立つ自社変革へのアプローチの一つが、「われわれを必要としているお客さまがいるなら、エリア外にも飛び出していこう!」という、経営層からの揺るぎないメッセージの発信だった。

「実は、営業計画グループの私たちも、まさにその方向性を検討していたんですよ。もちろん、すぐに高収益につながれば…、というような甘い考えではありません。全面自由化はゴールではなく、スタートライン。10年後、20年後を見据えて、まずは関西以外のエリアにいる法人のお客さまへ『攻め』の営業を展開し、関西電力グループの新たな収益の柱に育てていく。自分たちが描き出した未来志向の挑戦の舞台に立てるのは、最高に嬉しかったですね。」

もちろん、首都圏には東京電力という一般電気事業者がいる。
また、一部自由化以後に誕生した「新電力」と呼ばれる数多くのPPS(特定規模電気事業者)もライバルとなる存在だ。
そして、関電エネルギーソリューションも、首都圏という未知の市場では無名の「新電力」サイドに立って営業展開を図ることになる。

「関電エネルギーソリューションは、首都圏で既に10数件のお客さまにユーティリティサービス(電気設備の設計、施工、最適運用、保守までを一括して管理するサービス)を提供していましたが、お客さまから『一緒に電気も供給して欲しい』というご要望をいただいていました。何よりも、市場ポテンシャルを考えれば『挑戦するなら、最大のマーケットで勝負しよう』というのは、当然の流れでした。」

03.電力全面自由化に向けた戦略1

不可欠だった「プロ集団×スピード×本気」のチームワーク

「応接室2508」。
2013年7月1日の午後1時、大阪市街地を一望できる25階のオフィスの1室で、首都圏での電力供給事業を検討する「総合戦略チーム」が始動する。

新事業の立ち上げに向け、役員1名と、電源・工務(送電)・企画管理など各部門から5人のプロジェクトメンバーが集結し、最年少の山本も「営業部門の代表として、力を発揮しよう!」と、意気揚々と参加した。
だが、顔合わせを兼ねたミーティングを終えたとき、意気揚々としていた胸中には不安が募るばかりだった。

「私以外のチームメンバーは、錚々たるキャリアを積んできた百戦錬磨のスペシャリストばかり。全員の自己紹介をするだけで5時間以上かかりました(笑)。経験も知識も自分とはレベルが違う、すごいメンバーの中に入ったんだと痛感したことを強烈に覚えています。完全に鼻っ柱を折られたというか、これだけのプロフェッショナル集団の中で自分がやっていけるのかと不安が押し寄せましたね。」

不安はすぐに、現実のものとなる。関西電力での営業経験はBtoC営業が中心であり、BtoB営業の経験はなく、メンバーに意見を求められても、即答できない自分の無力さを思い知らされた。何とかしようと昔の上司や同僚を訪ねては、BtoBビジネスのイロハを教わる毎日。そんな日々を繰り返しながら何とか販売戦略を練り上げていった。

また、チーム内には一つのルールが決まっていた。3ヶ月以内に首都圏エリアでの新電力ビジネスのビジョンを描き、立ち上げていくという「100日ルール」である。それは「100日で無理なら、次のステップには進まない」という不退転の決意の表れでもあった。そのため、山本は吸収した知識やノウハウを即座に、かつ、的確にアウトプットし、チームに貢献することを求められる厳しさも味わっていた。
そして2013年9月20日、100日を待たずして新電力事業参入のプレスリリースにこぎ着け、新電力ビジネスはその第一歩を踏み出した。

「今想えば、あの3ヶ月間は何年にも感じるほど、濃密な時間でしたね。ほぼ白紙の状態から、柱となる新事業を立ち上げていく。
そのためには、これだけのメンバーが揃わなければ、これほどのスピード感がなければ、そして全員が本気にならなければ、不可能なんだと実感しました。チームのトップが『とにかくわれわれは挑戦者。まずは君の思うようにやってみなさい。』と言ってくれたことも嬉しかったですね。
このチームの一員になれて本当に良かったと感じましたし、いつの間にか不安は消え、やってやろうという高揚感でいっぱいになっていました。」

04.電力全面自由化に向けた戦略2

守るべきお客さまがいない、ゼロからの「攻め」のビジネス

総合戦略チームが描き出した、新電力ビジネスの展望と可能性。

それは「すべてのお客さまに、平等に電気を供給する。」という電気事業の基本思想を捨て去ることが、出発点となっていた。
「関西電力は一般電気事業者として供給義務があるので、関西エリアのすべてのお客さまがサービス対象です。それを『守り』だとすれば、われわれ新電力は特定のお客さまにのみ供給する『攻め』のビジネス。どんな提案をするかよりも、誰に提案するかが大切です。営業よりもマーケティングに近い感覚ですね。守るべきお客さまがいないゼロからのスタートだからこそ、いかに供給させて頂きたいお客さまを見極めるか。それが営業戦略の鍵を握っていると考えました。」

お客さまには安価な電気を供給でき、会社としても適正な収益を得ることができる。そんなWin-Winの関係を構築するために、ふさわしいお客さまは存在しないか。山本は周到な顧客セグメンテーションにより、提案すべきお客さまを絞り込んでいった。
「首都圏に数十万件もあるお客さまの中で、他社よりも具体的なメリットを実感してもらいやすいターゲットであれば、電力の契約を切り替えてくれるはず。そう考えて、ロードカーブ(24時間の電気使用量曲線)を想定したり、春夏秋冬の使い方の違いを調べたりと、すべてオーダーメイドで提案資料を作成しています。お客さまの数だけ、新しい料理のレシピを考案しているようなものですね。」

ただ、顧客基盤がないだけに最大のハードルは「知名度」だ。関西では「関電」の呼び名を知らない人はいないが、首都圏では通用しない。
アポイントを取ろうと1日に何十件電話しても、門前払いは当たり前の日々が続いた。
「知名度のなさは、衝撃的でしたね。おかげで、関西にいたときよりも『お客さま本位で、自分にできることは何か』を心掛けるようになりました。
初めて契約いただいたお客さまでは、初アポイントの日が大雪。提案どころじゃないと思い『雪かきを手伝います。』と言ったら、その後とんとん拍子に話が進んで…。知名度がないからこそ、私の本気度が伝わって評価されるのは嬉しいですし、『関西の電力会社が、東京で電気を供給すること自体が新鮮で面白い。今後も頑張って欲しい』と応援していただけます。しっかりと競争してより良いサービスを提供してほしいというお客さまの想いを肌で感じています。」

05.今後のエネルギー業界の展望

マネジメントの見える化と、緻密な「同時同量」の実現

今、山本は新電力ビジネスが新たな柱へと育っていく手応えとともに、さらにサービスを拡充していく必要性も感じている。

「お客さまにとって、電気が安定的に供給されることは今や当たり前。
だからこそ、電力会社を切り替える決め手は、電気料金の削減となります。
ただ今後は、料金単価を下げるだけの提案ではなく、省エネによって使用量も減らす、つまり『単価×使用量』をトータルで低減できる提案をしていかなければなりません。ひと言で言えば、『付加価値』をつくり出すということなのかもしれません。」

そんな付加価値づくりのためチーム内で検討を進めているのが、「エネルギーの見える化」だ。
お客さまの過去の電気使用量や天候・気温などの情報を分析し、エネルギーの使用状況を「見える化」するトータルサービスには、関西電力が推進してきたコンサルティング提案のノウハウを応用できる。さらに、スマートメーター(通信機能を持つデジタル電力量計)の普及が進み30分単位で電力使用量がわかるようになれば、よりきめ細やかなエネルギーマネジメントが可能になっていく。

「新電力事業の業務のひとつに、電気の『同時同量』というものがあります。電気を使う量とつくる量を一定の範囲内で一致させなければペナルティが発生し、それによって、事業の収益に大きく影響する。私たち営業担当の業務には、お客さまの勤務時間帯や休日、不定期なイベントの開催情報などをできる限り把握し、需給調整を行っている担当者につないでいくという仕事もあるんです。まさに「電源」「需給調整」「営業」が部門の垣根を取り払って日々の運用を行っていくことが、このビジネスにとってはとても大切なんですね。そういう一体感のようなものの重要性は、総合戦略チームでの事業立ち上げの頃から、トップから私たちに繰り返し伝えられてきたことですし、そんな雰囲気が、このチームにはしっかりと根付いている。それこそが、このチームにとって最大の強みなのではないかと思います。」

06.これからの目標

変革の渦中にあるからこそ、ピンチをチャンスに変えていける

目の前のお客さまの期待に応え、収益目標の数字にこだわりながら、将来への布石も忘れてはならない。
短期と中長期、2つの視点を併せ持ちながら挑戦を続ける山本には、「いつの日か、もうひとつの関西電力」の未来像が見えている。

「自分のキャリアが10年後にどうなりたいかは、あまり考えていません。入社当時に今の自分の姿は想像もつきませんでしたし、いい意味で、目の前の仕事に取り組みながら目標が変わってきたような気がします。
それよりも、新電力ビジネスをどうしていくか、今はそのことで頭がいっぱいです。お客さまの数が増えれば増えるほど、少しずつ関西電力や東京電力のような、一般電気事業者に近づいていくことになりますが、そのためにもユーティリティサービスとのセット提案や関西電力グループ企業との協業、他業種企業とのアライアンスなど、まだまだやるべきことはたくさんあると思います。

全面自由化はすぐそこまで来ていますが、電力業界が変革期の大きな渦の中にあるからこそ、ピンチをチャンスに変える必要がある、と改めて感じますね。『ゼロからのスタートだからこそ、失敗を恐れずにやろう』。それがチーム発足時からの合言葉。
一緒に汗を流し、本気で議論できるメンバーと、前例のない仕事にこれからも、挑戦し続けていきたいですね。」

関西電力とは別に、新電力から成長を遂げた「もうひとつの関電」が誕生する。
そんな究極の目標に向かって、山本が描く物語は、プロローグを終えて本編の扉が開かれようとしている。