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関西ゆかりの文豪を訪ねて

関西には、司馬遼太郎をはじめ谷崎潤一郎や与謝野晶子など日本を代表する作家や歌人が多く住み、名作を生み出してきました。今回はこうした作家の記念館をはじめとするゆかりの場所をご紹介します。休日のお出かけに、作品が書かれた背景などに思いをはせながら、散策を楽しんではいかがでしょう。

司馬遼太郎 川端康成 与謝野晶子
佐藤春夫 志賀直哉 谷崎潤一郎

司馬遼太郎(1923年生~1996年没)

司馬遼太郎イメージ

大阪市生まれ。新聞記者として在職中に『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『国盗り物語』など、戦国・幕末・明治を扱った歴史小説を多く残しました。司馬遼太郎はペンネームで、中国の歴史書『史記』を完成させた司馬遷(しばせん)に遼(はるか)に及ばずという意味が込められているそうです。命日の2月12日は、司馬遼太郎が好きだった菜の花にちなんで、「菜の花忌」と呼ばれています。

司馬遼太郎記念館(大阪・東大阪市)
カーブの曲線が美しいガラス回廊 自宅との庭伝いに作られた個人記念館で、東大阪市の住宅地に立地しています。「来館した人それぞれが司馬遼太郎の作品や自分自身と対話できるような空間を提供したい」というコンセプトのもと、建築家の安藤忠雄氏が設計。四季折々の自然が楽しめる庭からは、生前のままに保存された書斎を窓越しに見学できます。
館内の高さ11メートルの壁面に2万冊以上の蔵書が詰まった大書架は圧巻です。ホールでは司馬遼太郎に関する映像を見ることができるほか、講演会や演奏会などのイベントも催され、新しいコミュニティの拠点ともなっています。 生前のままに保存された書斎

司馬遼太郎記念館のサイトはこちら

東大阪市・小阪界隈を歩く
船板塀の民家 東大阪市・中小阪近辺は船板塀(左写真)が続く民家が連なり、歴史を感じさせるたたずまいを残しています。司馬遼太郎も生前、夫人とともによく界隈を散策したといわれ、周囲には弥栄神社小坂神社などのお社が点在するほか、鎌倉時代中期作の木造阿弥陀如来立像が安置された延命寺もあります。
小阪界隈マップ
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川端康成(1899年生~1972年没)

川端康成肖像写真

大阪市天満で開業医の長男として誕生。幼くして父母を結核で亡くし、父方の祖父母と共に大阪府茨木市で暮らしました。しかし7歳で祖母を亡くし、15歳で祖父とも死別し、孤独な少年時代を送っています。旧制中学時代からすでに小説家を志し、『伊豆の踊子』『雪国』など、日本の伝統と美意識を根底に、日本人が持つ感性を織り交ぜた作品を数多く発表しました。1968年には日本人として初のノーベル文学賞を受賞しています。

茨木市立 川端康成文学館(大阪・茨木市)
文学館外観 幼児期から旧制中学を卒業するころまで茨木市で暮らした川端康成の、少年時代にまつわる資料や遺品400点あまりを展示しています。父・栄吉の写真、小学校時代の綴り方帳や図画などは同館でしか見られない貴重な品です。
また、祖父母と暮らした茨木市宿久庄(しゅくのしょう)の屋敷の模型(20分の1)を展示。ナレーションに従って屋根が上がり、屋敷内を見渡すことができるユニークな仕組みになっています。ビデオコーナーではノーベル文学賞授賞式の様子を鑑賞することもできます。 展示室と宿久庄屋敷模型

川端康成文学館のサイトはこちら

茨木市・川端通り周辺を歩く
川端通り 川端康成文学館前の道は“川端通り”と名づけられ、春には桜が咲き誇ります。散歩やジョギングを楽しむ人も多く、市民から愛される通りになっています。 川端が通った旧制茨木中学校(現・府立茨木高校)や豊臣秀吉の茶の湯にも供された名水「黒井の清水」で有名な茨木神社も近くにあります。
川端通り周辺マップ
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与謝野晶子(1878年生~1942年没)

与謝野晶子肖像写真

大阪府堺市に和菓子商の三女として誕生。明治・大正・昭和と激動の時代を短歌とともに生き、「情熱の歌人」と呼ばれました。代表作『みだれ髪』では、後に夫となる鉄幹へのあふれる愛を歌いあげ、若い世代の圧倒的な支持を得ます。古典文学の現代語訳に情熱を注ぐ一方、女性の自由と自立を求めた社会活動や評論を展開し、エネルギッシュな人生を送りました。

堺市立文化館 与謝野晶子文芸館(大阪・堺市)
与謝野晶子愛用の家具や自筆資料、著書、写真パネルなどを通して、堺時代から亡くなるまでの生涯を分かりやすく展示しています。常設展では毎月、遺品や資料を入れ替えるほか、年に一度特別展を開催し、与謝野晶子の幅広い活動の一端をより深く紹介しています。
また、堺市立文化館では、アルフォンス・ミュシャ館を併設。与謝野夫妻の活躍の場だった機関誌『明星』では挿絵にミュシャの作品を取り入れるなどつながりも深く、与謝野晶子の歌の世界とミュシャの美術を同時に楽しむことができます。
館内展示風景

与謝野晶子文芸館のサイトはこちら

堺市街を歩く
堺刃物伝統産業会館 かつて貿易港として栄えた堺市街には、歴史を伝えるスポットや物産品があふれています。堺刃物伝統産業会館鉄砲鍛冶屋敷、チンチン電車が走る宿院(しゅくいん)駅周辺には、与謝野晶子生家跡千利休屋敷跡なども残っています。
堺市街マップ
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佐藤春夫(1892年生~1964年没)

佐藤春夫肖像写真

和歌山県新宮市生まれ。ふるさとをこよなく愛し“望郷詩人”とも呼ばれました。1918年に谷崎潤一郎の推薦で文壇にデビュー後、たちまち流行作家の地位を築きます。私生活では、谷崎潤一郎の前夫人・千代に思いを募らせ、後に結婚。代表作『秋刀魚の歌』にも千代への思いが表現されています。小説、詩歌、紀行文、戯曲、随筆、評論、童話と幅広く活躍し、1960年には文化勲章を受章しました。

新宮市立 佐藤春夫記念館(和歌山・新宮市)
記念館外観と応接間 1989年に東京の旧宅を移築復元し、熊野速玉(くまのはやたま)大社敷地内に建てられました。当時を再現した応接間のほか、サンルーム、書斎などを見学できます。
展示品には詩集や小説などの初版本、少年時代の写真のほか、常設展では谷崎潤一郎と佐藤春夫連名の離婚・結婚のあいさつ状などを見ることができます。また、門弟代表として井上靖、井伏鱒二、吉行淳之介ら9人が贈った直筆のメッセージ・パネルも展示されています。 展示室

佐藤春夫記念館のサイトはこちら

新宮市・熊野周辺を歩く
熊野速玉大社 記念館がある熊野速玉大社は、熊野本宮大社、熊野那智大社と共に熊野三山と呼ばれ、紀伊山地の霊場のひとつとして参詣道を含め世界遺産に登録されています。境内には『望郷五月歌』の碑が建立されています。
熊野周辺マップ
また、記念館から徒歩圏内には佐藤春夫生誕碑や成育の家跡、愛用の筆と万年筆が納められている春夫筆塚があります。毎年11月3日の文化の日には、古くなった筆を燃やし文筆向上を願う「筆供養」が行われます。  
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志賀直哉(1883年生~1971年没)

志賀直哉イメージ

宮城県石巻市生まれ。東京帝国大学に入学するも後に中退し、武者小路実篤、有島武郎らと『白樺』を創刊。無駄のない簡潔な文章で“小説の神様”と評されました。奈良には1925年から約10年間、家族と暮らし、名作『暗夜行路』『痴情』などを生み出しました。1949年に文化勲章を受賞しています。

志賀直哉旧居(奈良・奈良市)

志賀直哉自身が設計した数寄屋(すきや)造りの家で、内部を一般公開しています。日本の建築様式を基調としながらも洋風、中国風を取り入れた邸宅です。天窓の美しいサンルームは志賀直哉を慕う多くの文化人にも親しまれ、奈良市高畑にあることから“高畑サロン”と呼ばれました。

志賀直哉旧居全景 『暗夜行路』を完結した書斎、白樺派の精神を生かした茶室など庭園を通りながらゆっくり見学できます。夫人の居間や子ども部屋は日当たりもよく、家族への配慮が随所に感じられます。旧居は現在、奈良文化女子短期大学が所有。有形登録文化財に指定されています。

志賀直哉旧居のサイトはこちら

奈良市・高畑界隈を歩く
自然美と古都ならではの文化、美術に惹かれて奈良に移った志賀直哉。旧居がある高畑は奈良公園に程近く、若草山、春日山、高円山が望めます。
また、界隈には花の名所が多く、“萩の寺”として知られる新薬師寺や、五色椿で有名な白毫(びゃくごう)寺、さらには奈良大和路を撮り続けた写真家・入江泰吉を記念した入江泰吉記念奈良市写真美術館など、見どころが豊かです。 奈良市写真美術館写真
高畑界隈マップ
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谷崎潤一郎(1886年生~1965年没)

谷崎潤一郎肖像写真

東京都日本橋生まれ。父の事業が失敗し、経済的には不遇の中で育ちましたが学業成績は極めて優秀でした。東京帝国大学に入学しながらも後に中退。耽美(たんび)主義と評される作風が永井荷風に賞賛され、文壇に華やかに登場しました。デビュー作『刺青』以後、『痴人の愛』『細雪』など常に第一線で活躍します。関西には関東大震災直後に移り住みました。1949年の文化勲章受賞をはじめ、数々の賞を受けています。

芦屋市 谷崎潤一郎記念館(兵庫・芦屋市)
記念館外観と愛用の硯など 谷崎潤一郎が好んだ数寄屋(すきや)風建築で、関西で最後に暮らした住居の庭を模した庭園が見事です。『細雪』の幸子のモデルになった愛妻・松子夫人にあてた自筆の手紙や原稿、写真や愛用品などを見学することができます。
庭園を眺めながらゆったりとお茶を飲める喫茶コーナーもあります。講義室ではセミナーなどテーマ性に富む様々な催しを実施しています。 記念館庭園

谷崎潤一郎記念館のサイトはこちら

芦屋界隈を歩く
芦屋市立美術博物館 谷崎潤一郎記念館に隣接する芦屋市立美術博物館では、芦屋市ゆかりの作家の作品を中心に、国内外の著名な絵画や作品を見ることができます。
芦屋界隈マップ
市内を南北に流れる芦屋川には遊歩道が設置され、北上すれば『細雪』の舞台となった水道橋があります。川のせせらぎと緑の自然の中、芦屋のお屋敷街を眺めながら、のんびりと散歩を楽しんではいかがでしょう。
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