プレスリリース

2011年9月2日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

 当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1.運転状況について(平成23年9月1日現在)
発電所 電気
出力
(kW)
運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 第25回 定期検査中
H22年11月24日〜未定
当初4月下旬定期検査終了予定
2号機 50.0万 運転中  
3号機 82.6万 第25回 定期検査中
H23年5月14日〜未定
 
高 浜
発電所
1号機 82.6万 第27回 定期検査中
H23年1月10日〜未定
当初4月中旬定期検査終了予定
2号機 82.6万 運転中  
3号機 87.0万 運転中  
4号機 87.0万 第20回 定期検査中
H23年7月21日〜未定
  • ○高浜発電所4号機の定期検査状況について(蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果に対する原因と対策について)
    詳細は2(1)のとおり
    平成23年8月18日8月26日お知らせ済み】
大 飯
発電所
1号機 117.5万 第24回 定期検査中
H22年12月10日〜未定
  • 当初4月上旬定期検査終了予定
  • ○大飯発電所1号機の原子炉手動停止について(C−蓄圧タンク圧力の低下の原因と対策)
    詳細は2(2)のとおり
    平成23年7月16日8月26日お知らせ済み】
2号機 117.5万 運転中
  • ○大飯発電所2号機の格納容器内温度計の指示値の低下に伴う運転上の制限の逸脱について
    詳細は2(3)のとおり
    【原因対策を取りまとめましたのでお知らせ(発生については平成23年8月30日に当社ホームページ上でお知らせ済み)】
3号機 118.0万 第15回 定期検査中
H23年3月18日〜未定
当初7月中旬定期検査終了予定
4号機 118.0万 第14回 定期検査中
H23年7月22日〜未定
 
  • ○定期検査中のプラントについては、定期検査開始〜本格運転再開予定時期を記載。
  • ※福島第一原子力発電所事故に対する安全対策の実施状況を踏まえ、計画していく。

2.トラブル等情報について

(1) 法令に基づき国に報告する事象(安全協定の異常時報告事象にも該当する事象)

発電所名  高浜発電所4号機 発 生 日  平成23年8月18日
件  名 高浜発電所4号機の定期検査状況について(蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果に対する原因と対策について)(添付図1)
事象
概要
および
対策等

 平成23年7月21日から実施している第20回定期検査において、3台ある蒸気発生器(SG)の伝熱管全数*1について渦流探傷検査(ECT)*2を行った結果、B−SGの伝熱管1本およびC−SGの伝熱管1本の高温側管板*3部(計2本)で、有意な信号指示が認められました。なお、A−SGの伝熱管については、有意な信号指示は認められませんでした。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。

1.原因調査

  伝熱管2本の高温側管板部で有意な信号指示が認められた原因を調査するため、過去の調査結果との比較や、運転履歴の調査を実施しました。

(1)過去の調査結果との比較
  • ・高浜4号機では、第11回定期検査(平成11年)において高温側管板拡管部で有意な信号指示が確認され、抜管調査の結果、ローラ拡管*4上端部付近の伝熱管内面で軸方向に沿った割れが認められました。原因は、管内面での引張り残留応力と運転時の内圧とが相まって生じた応力腐食割れであると推定しました。
  • ・その後、当該部の応力腐食割れの発生を予防するため、第13回定期検査(平成14年)でSG伝熱管の高温側管板拡管部内面にショットピーニング*5を施工し、伝熱管内表面の引張り残留応力を改善しました。
  • ・今回の有意な信号指示は、いずれも1高温側管板部のローラ拡管上端部付近であり、2伝熱管の軸方向に沿った内面傷を示す指示であるなど、過去に同機で検出された信号と類似の特徴が認められました。
(2)ショットピーニングの効果
  • ・ショットピーニングでは、伝熱管内表面近傍(深さ約0.2mmまで)の引張り残留応力が改善されますが、これより深い部分では効果が小さいことが知られています。
  • ・このため、ショットピーニング施工時に、深さ0.2mm以上で当時使用していたECTの検出限界未満(深さ約0.5mm未満)の微小な傷が既に発生していた場合、時間の経過とともに傷が進展する可能性があると推定しました。
(3)運転履歴調査
 運転開始以降、今定期検査開始に至るまでの期間について、1次冷却材の主要パラメータである温度、圧力、水質について調査を行った結果、過大な応力を発生させる温度、圧力の変化はなく、水質も基準値の範囲内で安定していたことを確認しました。
2.推定原因

 有意な信号指示が認められた原因は、過去の調査結果等からSG製作時に当該伝熱管を管板部で拡管する際、管内面に引張り残留応力が生じ、これが運転時の内圧と相まって伝熱管内面で応力腐食割れが発生し、今回検出されたものと推定しました。

3.対策

 有意な信号指示が認められた伝熱管2本については、高温側および低温側管板部で閉止栓(機械式栓)を施工し、使用しないこととします。

  • *1 伝熱管全数:既施栓管を除きA−SGで3,247本、B−SGで3,249本、C−SGで3,260本、合計9,756本。
  • *2 渦流探傷検査(ECT):高周波電流を流したコイルを、伝熱管に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物の欠陥により生じた渦電流の変化を電気信号として取り出すことで欠陥を検出する検査。
  • *3  高温側管板:蒸気発生器内の伝熱管が取り付けられている部品。伝熱管と管板で、1次冷却材と給水(2次冷却水)の圧力障壁となる。
  • *4  ローラ拡管:伝熱管内部に機械式ローラを通すことで伝熱管を押し広げて、伝熱管と管板を接合させる工程。
  • *5  ショットピーニング:伝熱管内面に小さな金属球を高速で叩き付けることにより、伝熱管内面の引張り残留応力を圧縮応力に改善する工事。
(経済産業省によるINESの暫定評価)
 基準1  基準2  基準3  評価レベル 
0−0−
INES:国際原子力事象評価尺度

平成23年8月18日26日 お知らせ済み]

(2)安全協定の異常時報告事象

発電所名  大飯発電所1号機 発 生 日  平成23年7月16日
件  名 大飯発電所1号機の原子炉手動停止について(C−蓄圧タンク圧力の低下の原因と対策について)(添付図2)
事象概要
および
対 策 等

 平成22年12月10日から実施している第24回定期検査中で調整運転中のところ、平成23年7月15日22時46分に「C−蓄圧タンク*1圧力高/低」の警報が発信しました。
 C−蓄圧タンクの圧力計を確認したところ、圧力が通常4.60MPaのところ、保安規定に定める運転上の制限値4.04MPaを下回り、3.65MPaに低下していることが確認されました。このため、23時20分に、窒素供給ラインから当該タンクに窒素補給を開始した結果、23時45分に圧力は4.09MPaに回復し、保安規定に定める運転上の制限値4.04MPaを満足しました。
 その後、7月16日0時38分に窒素補給を終了し、当該タンクの圧力の監視を強化するとともに、当該タンクおよびタンク周りの弁や配管の外観点検を行い、タンク等の外観に異常は認められませんでした。また、圧力も約4.08MPaで安定的に推移しています。
 当社では、安全を最優先に、7月16日、13時00分から出力降下し、19時48分に発電を停止、20時53分に原子炉を停止させ、圧力低下の原因を調査し、対策を実施することとしました。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。

1.原因調査
(1)現地調査結果
  • ・当該タンクおよびタンクに接続されている配管等の漏えい確認および圧力計(2台)の点検の結果、異常は認められませんでした。
  • ・当該タンクの圧力低下時に、格納容器圧力が僅かに上昇していることから当該タンク内の窒素が格納容器内に排出されたものと推定されました。
  • ・プラント起動時(平成23年3月)と比較すると、格納容器内空調設備の冷却水を冷やす海水温度の上昇に伴い格納容器内の温度が上昇し、蓄圧タンク圧力も増加傾向(約4.50MPa→4.62MPa)にあることを確認しました。
(2)蓄圧タンク安全弁の調査結果
 上記の調査結果から、当該タンクの安全弁*2が作動し、タンク内の圧力が低下したものと推定されたことから、安全弁の詳細調査を実施しました。
(吹出し圧力確認結果)
  • ・当該安全弁は、バネで弁体を弁座に押し付ける構造で、タンク圧力がバネ力を上回ると弁が開きます。
  • ・前回の定期検査(平成21年8月〜平成22年1月)で当該弁を分解点検し、弁が開く圧力(吹出し圧力)が基準値内(4.76MPa〜4.89MPa)であることを試験で確認した後、タンクに取り付けられました。
  • ・今回、当該安全弁の吹出し圧力の確認試験を実施した結果、前回の定期検査での値を下回る(4.50MPa〜4.71MPa)ことが確認されました。
(吹止まり圧力確認結果)
  • ・安全弁が開いた後に閉止する時の圧力(吹止まり圧力)は、吹出し圧力からの低下が10%以内とされていますが、今回、圧力低下が約20%であったため、吹止まり圧力の確認試験を行いましたが、吹止まり圧力は正常な範囲でした。
(分解点検結果)
  • ・当該安全弁の分解点検を実施した結果、バネ、弁捧等の部品に異常はなく、異物も認められませんでした。
  • ・弁体、弁座の当たり面(シート面)の目視確認の結果、有意な傷は確認できませんでしたが、拡大観察の結果、細かなレコード溝状のすじが認められました。
(吹出し圧力低下の調査結果)
  • ・分解点検からタンクへの取付けまでの一連の作業について再現試験を行った結果、シート面の手入れ(研磨材を用いた研磨作業)時間が短い場合には、シート面にレコード溝状のすじが発生し、シート面が粗い状態になることを確認しました。
  • ・シート面の状態が吹出し圧力に与える影響についてモックアップ試験を行った結果、シート面が粗い状態では、吹出し圧力の確認試験後に、吹出し圧力が低下する場合があることが確認されました。
(吹止まり圧力低下の調査結果)
  • ・バネのへたりや部品の腐食等の異常が認められていないことから、吹止まり圧力が低下する要因としては、異物の混入により、吹出し後に弁体が元の位置に戻りにくくなった可能性があると推定されました。
  • ・モックアップ試験の結果、微小な異物(金属性のくず等)が弁体とその外側に設置されている弁体ガイドの間に入った場合、接触抵抗が増加し、吹止まり圧力が低下することが確認されました。
  • ・前回の定期検査での作業状況を調査した結果、当該安全弁の取外しおよび取付けの際に、安全弁取付け配管に異物が混入した可能性は否定できませんでした。
2.推定原因
 前回の定期検査において、当該安全弁の分解点検を実施した際、弁体および弁座のシート面の手入れ時間が短く、シート面が粗い状態であったことから、吹出し圧力検査後、吹出し圧力が低く動作する状態となっていたものと推定されました。
 この状態で、格納容器内の温度上昇に伴い、タンク内の圧力が徐々に高くなったことから、安全弁が動作したものと推定されました。
 吹止まり圧力低下の原因については、定期検査時の当該安全弁取外し・取付けの際に、異物が安全弁取付け配管内に混入し、安全弁作動時に、弁体と弁体ガイドの隙間に噛み込んだためと推定されました。
3.対策
 当該安全弁については、シート面の手入れ作業を行い、シート面が平滑に仕上げられていることを拡大鏡を用いて確認した上で復旧するとともに、作業要領書を見直し、シート面の手入れ後に拡大鏡で確認する手順を追記します。
 当該安全弁取外し・取付け作業の際は、安全弁の周囲をビニールシート等で覆い、異物が入り込まないよう異物管理を強化します。
 大飯1号機の他の3台の蓄圧タンク安全弁については、今回の調査の一環として分解点検を行い、シート面に傷等がないことを確認していますが、今後、タンクに取付ける際には、これらの対策を徹底します。
 なお、格納容器内の温度上昇に伴う当該タンクの圧力変化を考慮し、運用圧力や警報設定値の適正化を図ります。
  • *1 蓄圧タンク:ほう酸水を蓄えているタンクで、4系統ある1次冷却系統にそれぞれ1基ずつ設置されている。原子炉冷却材喪失事故時など、1次冷却系統の圧力が窒素で加圧されている蓄圧タンクの圧力よりも低下した際に、ほう酸水が系統に注入される。
  • *2 安全弁:タンク内の圧力が上昇した際にタンクの損傷を防止するために圧力を逃す弁

[平成23年7月16日8月26日お知らせ済み]

(3)保全品質情報等

発電所名  大飯発電所2号機 発 生 日 平成23年8月30日
件  名 大飯発電所2号機の格納容器内温度計の指示値低下に伴う運転上の制限の逸脱について(添付図3)
(概要)
 定格熱出力一定運転中のところ、2台ある事故時監視用の格納容器内温度計のうち1台の指示値が低下していることから当該計器が動作不能と判断し、平成23年8月30日4時42分に保安規定の運転上の制限を満足していないものと判断しました。
 調査の結果、格納容器内温度計の信号線の1本に異常が確認されたため、予備線につなぎかえ、状況を監視したところ、温度計の指示値が安定したため、9月1日18時10分に運転上の制限の逸脱からの復帰を宣言しました。
 この事象による周辺環境への放射能の影響はありません。
事象概要
および
対 策 等

 定格熱出力一定運転中のところ、8月30日2時過ぎに、2台ある事故時監視用の格納容器内温度計(*1)のうち1台の指示値が低下していることを中央制御室の運転員が確認したため監視強化していたところ、同日3時10分頃に自然復帰しましたが、4時40分に再度低下したことを確認したため、当該計器が動作不能と判断し、同日4時42分に保安規定の運転上の制限の逸脱を宣言しました。
 当該温度計を構成している温度検出器、信号線、信号変換装置ならびに指示計について、調査を行いました。その結果、温度検出器及び信号線について、絶縁抵抗測定では異常は認められませんでしたが、抵抗値測定を行ったところ、信号線3線(A・B・C線)(*2)のうち、B線に関連する抵抗値が通常値より高く、また、ふらつきが確認されました。信号変換装置、指示計については、模擬信号を入力し動作状況を確認した結果、異常は認められませんでした。なお、信号変換装置など格納容器外の設備の接続端子に緩みなどはありませんでした。
 これらのことから、当該温度計の指示低下は、B線の抵抗値の上昇に伴うものと推定しました。B線の抵抗値が上昇した要因としては、格納容器内の接続端子の緩みによる接触抵抗の変化などの可能性が考えられます。

 対策として、異常が認められたB線を健全性を確認したD線(予備線)につなぎかえ、当該温度計を復旧しました。その後、当該温度計の指示値が安定的に推移していることを確認し、平成23年9月1日18時10分に保安規定の運転上の制限の逸脱からの復帰を宣言しました。

  • *1:格納容器内温度計:格納容器内の温度を監視するための計器として、通常運転時監視用と事故時監視用の2種類がある。
  • *2:信号線は4線が1本のケーブルに入っており、通常はその内の3線(A,B,C線)を使用する測定構成となっており、D線は予備線となっている。

運転上の制限からの逸脱は平成23年8月30日、復帰については、平成23年9月1日 当社ホームページ上でお知らせ済み

以 上

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