プレスリリース

2011年8月26日
関西電力株式会社

大飯発電所1号機の原子炉手動停止について(C-蓄圧タンク圧力の低下の原因と対策)

 大飯発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力117万5千キロワット、定格熱出力342万3千キロワット)は、第24回定期検査中で調整運転中のところ、平成23年7月15日22時46分に「C−蓄圧タンク※1圧力高/低」の警報が発信しました。
 C−蓄圧タンクの圧力計を確認したところ、圧力が通常4.60MPaのところ、保安規定に定める運転上の制限値4.04MPaを下回り、3.65MPaに低下していることが確認されました。このため、23時20分に、窒素供給ラインから当該タンクに窒素補給を開始した結果、23時45分に圧力は4.09MPaに回復し、保安規定に定める運転上の制限値4.04MPaを満足しました。
 その後、7月16日0時38分に窒素補給を終了し、当該タンクの圧力の監視を強化するとともに、当該タンクおよびタンク周りの弁や配管の外観点検を行い、タンク等の外観に異常は認められませんでした。また、圧力も約4.08MPaで安定的に推移しています。
 当社では、安全を最優先に、7月16日、13時00分から出力降下し、19時48分に発電を停止、20時53分に原子炉を停止させ、圧力低下の原因を調査し、対策を実施することとしました。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。

平成23年7月16日お知らせ済み]

※1 蓄圧タンク
ほう酸水を蓄えているタンクで、4系統ある1次冷却系統にそれぞれ1基ずつ設置されている。原子炉冷却材喪失事故時など、1次冷却系統の圧力が窒素で加圧されている蓄圧タンクの圧力よりも低下した際に、ほう酸水が系統に注入される。
1.原因調査
(1)現地調査結果
  • ・当該タンクおよびタンクに接続されている配管等の漏えい確認および圧力計(2台)の点検の結果、異常は認められませんでした。
  • ・当該タンクの圧力低下時に、格納容器圧力が僅かに上昇していることから当該タンク内の窒素が格納容器内に排出されたものと推定されました。
  • ・プラント起動時(平成23年3月)と比較すると、格納容器内空調設備の冷却水を冷やす海水温度の上昇に伴い格納容器内の温度が上昇し、蓄圧タンク圧力も増加傾向(約4.50MPa→4.62MPa)にあることを確認しました。
(2)蓄圧タンク安全弁の調査結果
 上記の調査結果から、当該タンクの安全弁※2が作動し、タンク内の圧力が低下したものと推定されたことから、安全弁の詳細調査を実施しました。
※2 安全弁
 タンク内の圧力が上昇した際に、タンクの損傷を防止するために圧力を逃す弁
(吹出し圧力確認結果)
  • ・当該安全弁は、バネで弁体を弁座に押し付ける構造で、タンク圧力がバネ力を上回ると弁が開きます。
  • ・前回の定期検査(平成21年8月〜平成22年1月)で当該弁を分解点検し、弁が開く圧力(吹出し圧力)が基準値内(4.76MPa〜4.89MPa)であることを試験で確認した後、タンクに取り付けられました。
  • ・今回、当該安全弁の吹出し圧力の確認試験を実施した結果、前回の定期検査での値を下回る(4.50MPa〜4.71MPa)ことが確認されました。
(吹止まり圧力確認結果)
  • ・安全弁が開いた後に閉止する時の圧力(吹止まり圧力)は、吹出し圧力からの低下が10%以内とされていますが、今回、圧力低下が約20%であったため、吹止まり圧力の確認試験を行いましたが、吹止まり圧力は正常な範囲でした。
(分解点検結果)
  • ・当該安全弁の分解点検を実施した結果、バネ、弁捧等の部品に異常はなく、異物も認められませんでした。
  • ・弁体、弁座の当たり面(シート面)の目視確認の結果、有意な傷は確認できませんでしたが、拡大観察の結果、細かなレコード溝状のすじが認められました。
(吹出し圧力低下の調査結果)
  • ・分解点検からタンクへの取付けまでの一連の作業について再現試験を行った結果、シート面の手入れ(研磨材を用いた研磨作業)時間が短い場合には、シート面にレコード溝状のすじが発生し、シート面が粗い状態になることを確認しました。
  • ・シート面の状態が吹出し圧力に与える影響についてモックアップ試験を行った結果、シート面が粗い状態では、吹出し圧力の確認試験後に、吹出し圧力が低下する場合があることが確認されました。
(吹止まり圧力低下の調査結果)
  • ・バネのへたりや部品の腐食等の異常が認められていないことから、吹止まり圧力が低下する要因としては、異物の混入により、吹出し後に弁体が元の位置に戻りにくくなった可能性があると推定されました。
  • ・モックアップ試験の結果、微小な異物(金属性のくず等)が弁体とその外側に設置されている弁体ガイドの間に入った場合、接触抵抗が増加し、吹止まり圧力が低下することが確認されました。
  • ・前回の定期検査での作業状況を調査した結果、当該安全弁の取外しおよび取付けの際に、安全弁取付け配管に異物が混入した可能性は否定できませんでした。
2.推定原因
 前回の定期検査において、当該安全弁の分解点検を実施した際、弁体および弁座のシート面の手入れ時間が短く、シート面が粗い状態であったことから、吹出し圧力検査後、吹出し圧力が低く動作する状態となっていたものと推定されました。
 この状態で、格納容器内の温度上昇に伴い、タンク内の圧力が徐々に高くなったことから、安全弁が動作したものと推定されました。
 吹止まり圧力低下の原因については、定期検査時の当該安全弁取外し・取付けの際に、異物が安全弁取付け配管内に混入し、安全弁作動時に、弁体と弁体ガイドの隙間に噛み込んだためと推定されました。
3.対策
 当該安全弁については、シート面の手入れ作業を行い、シート面が平滑に仕上げられていることを拡大鏡を用いて確認した上で復旧するとともに、作業要領書を見直し、シート面の手入れ後に拡大鏡で確認する手順を追記します。
 当該安全弁取外し・取付け作業の際は、安全弁の周囲をビニールシート等で覆い、異物が入り込まないよう異物管理を強化します。
 大飯1号機の他の3台の蓄圧タンク安全弁については、今回の調査の一環として分解点検を行い、シート面に傷等がないことを確認していますが、今後、タンクに取付ける際には、これらの対策を徹底します。
 なお、格納容器内の温度上昇に伴う当該タンクの圧力変化を考慮し、運用圧力や警報設定値の適正化を図ることとしました。

以 上

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