プレスリリース

2010年4月9日
関西電力株式会社

高浜発電所2号機補助建屋排気筒ガスモニタの一時的な指示値の上昇に係る原因と対策について

 高浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力82万6千キロワット、定格熱出力244万キロワット。定格熱出力一定運転中)では、平成22年 3月8日1時00分よりガス分析器※1による体積制御タンク※2の放射性ガスの定例分析を実施したところ、1時13分に補助建屋排気筒ガスモニタ※3の注意警報が発信し、当該モニタの指示値が最大809cpm[13.5cps]※4に上昇しました。
 このため体積制御タンクとガス分析器の間の弁を閉じ、モニタ指示値は1時22分に通常レベル(約700cpm[約11.7cps])に戻りました。
 この時間帯に、当該分析系統が設置されたフロア(4階)のモニタ(仮設)も上昇していたことから、今回の分析操作に伴い、放射性ガスが室内に漏れ、補助建屋換気空調系統を通じて補助建屋排気筒から排出されたものと推定されたことから、放射性ガスが漏れた原因について調査を行うこととしました。
 今回、補助建屋排気筒から放出された放射性気体廃棄物の量を評価した結果、約2.8×10Bqで、保安規定に基づく高浜発電所の年間放出管理目標値(3.3×1015Bq/年)の約1,100万分の1以下※5で十分低く、発電所敷地内および周辺のモニタリングポストの指示値にも有意な変化は認められず、周辺環境等への影響はありませんでした。
 体積制御タンクのガス分析操作の際に使用した系統の機器および配管について漏えい検査を行ったところ、ガス分析器にガスを送り込んでいるポンプ(サンプラポンプ)2台のうち、今回使用していたポンプ(No.2)のダイヤフラム※6に変形とひび割れ(最大17.5mm)があり、ひび割れの中央部に貫通孔(ピンホール)を確認しました。
 なお、当該ポンプ以外の機器および配管については、漏えいにつながる異常は認められませんでした。

  • ※1 ガス減衰タンクなどの、1次系タンクの放射性ガスに含まれる酸素および水素の濃度を測定する装置。
  • ※2 化学体積制御系統の設備で、原子炉容器や配管内の1次冷却材の量を調整するためのタンク。
  • ※3 運転に伴って発生する気体放射性廃棄物(希ガス)を監視するモニタ。
  • ※4 cpmは1分間に、cpsは1秒間に測った放射線の数を表す単位。
  • ※5 高浜2号機の放射性気体廃棄物(希ガス)の年度放出実績は、平成18年度は6.3×10Bq、平成19年度は9.5×10Bq、平成20年度は3.2×10Bq。
  • ※6 ガスを吸込・吐出する際にガスと外気を隔てているゴム製の隔膜。

平成22年3月8日23日お知らせ済み]

1.調査結果
(1)ダイヤフラム表面の観察
  • ・電動機と反対側のダイヤフラム表面に認められた周方向のひび割れ(最大17.5mm)について、詳細に観察したところ、ひび割れの近傍に、面荒れやしわを確認しました。
(2)ダイヤフラムの取り付け状態の観察
  • ・当該ポンプは電動機の回転を、回転軸に取り付けたアームロッドの上下動に変え、アームロッドの先端に取り付けられたダイヤフラムを上下させることで吸排気を行う構造です。
  • ・このダイヤフラムは、外周部をポンプのアッパーブラケット(外枠)のフランジの段付き部にはめ込み、キャップで押さえつけて固定しています。
  • ・ダイヤフラムの取り付け状態を確認したところ、ダイヤフラムは段付き部に収まっていたものの、ダイヤフラム表面のキャップ押さえ痕が偏ってついていたことから、ポンプの中心に対し電動機と反対側にずれて取り付けられていることを確認しました。
(3)アームロッドの取り付け位置の調査
  • ・ダイヤフラムは、アームロッドにネジで固定されていますが、ネジ部にガタツキ等の異常は認められませんでした。
  • ・アームロッドの回転軸への取り付け位置を確認したところ、ポンプ中心に対し、約1.2mm、電動機と反対側にずれて取り付けられていることを確認しました。
  • ・このことから、ダイヤフラムがずれていた原因はアームロッドの回転軸への取り付け位置のずれによるものであることがわかりました。
(4)前回定期検査時の分解点検状況の調査
  • ・当該ポンプは、定期検査毎に現場で分解点検を行っており、前回定期検査の点検状況を確認したところ、分解時にアームロッドの取り付け位置をポンプの回転軸にマーキングし、組み立て時にはそのマーキングに目測で合わせて、アームロッドを取り付けていました。
(5)アームロッドの位置ずれがダイヤフラムに及ぼす影響の評価
  • ・通常、アームロッドがポンプの中心から1.2mmずれた状態でダイヤフラムの取り付けを行うと、アッパーブラケットのフランジの段付き部から僅かにはみ出した状態となりますが、今回、当該ダイヤフラムは段付き部に収まっていたことから、組み立て時にダイヤフラムを段付き部に押し込み、圧縮方向の力がかかった状態で取り付けられていたものと推定しました。
  • ・文献調査の結果では、ダイヤフラムが圧縮された状態で、繰り返し応力が加わると、摩擦熱が発生し、ゴムの劣化が促進され、面荒れやしわが発生し、これらが進展することでひび割れが生じることがわかりました。
  • ・また、ダイヤフラムの電動機側の変形は、劣化に伴うしわの発生により、引っ張られて生じたものと推定しました。
2.推定原因
  • ・補助建屋排気筒ガスモニタの指示値が上昇した原因は、体積制御タンクのガス分析時に、放射性ガスが当該ポンプのダイヤフラム損傷部(貫通孔)から室内に漏れ、補助建屋換気空調系統を通じて補助建屋排気筒から排出されたものと推定しました。
  • ・ダイヤフラムが損傷した原因は、前回定期検査時に現場で当該ポンプの分解点検を行った際、アームロッドの取り付け位置がずれた状態でダイヤフラムを押し込んで組み込んだことにより、ダイヤフラムに圧縮の力がかかった部分が生じました。この部分にポンプ運転中のダイヤフラムの上下動に伴い繰り返し応力が加わったことにより、摩擦熱が発生し、ゴムの劣化が促進され、ひび割れが発生し、進展したため、漏えいに至ったものと推定しました。
3.対 策
  • ・当該ポンプを含むサンプラポンプ2台について、軸部分(回転軸、アームロッド、軸受)とダイヤフラムを新品に取り替えます。その取り替えにあたっては、アームロッドの位置ずれを防止するため、あらかじめ工場でアームロッドと軸受を回転軸に取り付けることとします。
  • ・また、組み立ての際には、アームロッドとアッパーブラケットの間の距離を測ることにより、アームロッドが正規の位置(ポンプ中心)にあることを確認し、ダイヤフラムを取り付けます。
  • ・今後の分解点検にあたっては、軸部分は再使用せず、あらかじめ工場で部品の取り付けが行われた新品の軸部分に取り替えます。また、その組み立て時にはアームロッドが正規の位置にあることを確認し、ダイヤフラムを取り付けます。

以 上

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