プレスリリース

2008年4月17日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1.運転状況について(平成20年4月17日現在)
発電所 電気
出力
(kW)
運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 第23回 定期検査中
H20年3月25日〜7月中旬予定
 
2号機 50.0万 第24回 定期検査中
H19年7月20日〜8月下旬予定
 
3号機 82.6万 運転中  
高 浜
発電所
1号機 82.6万 第25回 定期検査中
H20年3月19日〜8月上旬予定
 
2号機 82.6万 第24回 定期検査中
H19年8月17日〜7月上旬予定
 
3号機 87.0万 第18回 定期検査中
H19年11月23日〜8月中旬予定
 
4号機 87.0万 運転中
大 飯
発電所
1号機 117.5万 運転中  
2号機 117.5万 運転中
大飯発電所2号機の出力降下について
(制御棒位置偏差大警報発信の原因と対策)
詳細は2(1)のとおり
H20年3月26日お知らせ済み】
3号機 118.0万 第13回 定期検査中
H20年2月2日〜7月上旬予定
(原子炉起動は6月上旬予定)
所内電源喪失に伴う非常用ディーゼル発電機の自動起動について
詳細は2(2)のとおり
H20年4月7日お知らせ済み】
   
原子炉容器Aループ出口管台溶接部の点検状況について
詳細は2(3)のとおり
【事象概要を取りまとめましたのでお知らせ】
4号機 118.0万 運転中  


2.トラブル等情報について

(1) 法令に基づき国に報告する事象(安全協定の異常時報告事象にも該当する事象)
発電所名  大飯発電所2号機 発 生 日 平成20年3月12日
件  名 大飯発電所2号機の出力降下について(制御棒位置偏差大警報発信の原因と対策) 
 (添付図1参照)
事象概要
および
対 策 等
 大飯発電所2号機は、定格熱出力一定運転中、平成20年3月12日9時15分から定期試験(1回/月)である制御棒動作確認試験を実施していたところ、停止グループのバンクD(制御棒4本/グループ)を228ステップから216ステップまで挿入し、その後222ステップまで引き抜いたところ、9時31分に「制御棒位置偏差大※1」の警報が発信しました。
 直ちに、ステップカウンタ※2表示値と制御棒の位置を指示する装置※3の指示値を確認したところ、停止グループバンクDのステップカウンタ表示値は222ステップでしたが、制御棒の位置を指示する装置では、1本の制御棒が198ステップを指示しており、残りの3本については、222ステップを指示していることを確認しました。
 保安規定※4に基づき、10時25分から出力降下を開始し、11時45分に原子炉出力を75%以下としました。
 また、炉外核計装装置の指示値に若干の指示値低下が認められたことから、制御棒が滑り落ちた可能性がありました。
 なお、本事象による周辺環境への影響はありません。

 保安規定で定める運転上の制限として、全ての制御棒が不整合でないことが求められていることから、当該制御棒の挿入、引き抜き操作を行い、正常位置に戻し、3月13日23時45分に保安規定の運転上の制限を満足した状態に復帰しました。


  ※1: ステップカウンタの表示値と制御棒位置指示装置の指示値の偏差が±12ステップ以上、または各バンクの制御棒位置指示装置の指示値の偏差が±12ステップ以上になると警報が発信する。
  ※2: 制御棒の操作信号を数えて、制御棒位置を表示する装置。
  ※3: 電気的にコイルを用いて制御棒位置を指示する装置。
全挿入位置は0ステップ、全引抜き位置は228ステップ。
  ※4: 当該警報が発信し、制御棒1本が不整合であることを確認後、1時間以内に復旧できない場合、2時間以内に原子炉出力を75%以下に下げる必要がある。


1. 原因調査結果
   当該制御棒が滑り落ちた原因として、制御棒を駆動させる電気設備や制御棒駆動機構等の異常が考えられるため、以下の調査を行いました。
   
 
(1) 電気設備の調査
  a. 制御棒駆動装置盤
     ヒューズ、配線等の接触不良により発生した可能性があることから、当該停止グループについて調査しましたが、異常は認められませんでした。また、当該停止グループのコイル電流測定や、制御棒駆動装置動作確認時における各コイルの電流波形の確認を行いましたが、異常は認められませんでした。
  b. 制御棒位置指示装置
     警報発信後の確認において、指示装置の異常を示す警報が出ていなかったこと、また、炉内出力分布結果から求めた評価位置と指示位置が一致していたことから、指示装置は正常であると考えられました。
     
(2) 制御棒駆動機構の調査
   部材の変形等による制御棒駆動機構摺動抵抗(部品同士の僅かな隙間部に生じる抵抗)の増加の有無について調査した結果、制御棒動作確認時のコイル電流波形および動作状況に異常は認められませんでしたが、1次冷却材中に存在するクラッド※5が摺動部の隙間に入り込んで、駆動機構摺動抵抗が増加する可能性があると考えられました。

※5: 1次冷却材中において、配管等の金属材料の酸化により生じる腐食生成物のうち、水に溶けないで存在する粒子状の金属酸化物の総称
   
(3) 制御棒動作ライン(制御棒の通る部分)
   制御棒動作確認では異常は認められていないことから、制御棒動作ラインの部品隙間部の抵抗に変動は生じていないと考えられます。
     
(4) 1次冷却材の水質調査
   前々回から前回定検と今回のプラント運転中の1次冷却材中の水質(pH、濁度等)は、社内管理値以内で管理されていることを確認しました。
 また、至近3定検以降の停止中、運転中の1次冷却材中のクラッド濃度に特異な変化はなく、異常は認められませんでした。
     
(5) その他(制御棒動作確認試験時等の動作確認)
   原子炉出力75%以下の状態で当該制御棒を正常な位置に戻して、全ての停止グループバンクの制御棒動作確認試験を行った結果、制御棒の動作状況および制御棒駆動装置のコイル電流波形に異常は認められませんでした。
 制御グループバンクについても、原子炉出力75%以下の状態での制御棒動作確認試験や、出力降下時における制御棒の動作状況を確認した結果、異常は認められませんでした。
 また、3月25日より出力上昇を開始し、翌26日5時20分に定格熱出力一定運転状態として制御棒動作確認試験を行った結果、異常は認められませんでした。
   
2. 国内外の同種事例調査
   国内外の同種事例を調査した結果、国内で1件、海外で数件の事例が抽出され、制御棒の滑り落ち事例については、制御棒駆動機構摺動部へのクラッドの付着が原因であることがわかりました。
   
 
  国内の事例
  平成18年12月に四国電力伊方発電所2号機で発生した制御棒の滑り落ち事象は、制御棒駆動機構摺動部へのクラッド等の付着により摺動抵抗が増加したことで、ツメ※6の動作時間遅れが発生したことが原因と推定されています。
 当社は、クラッド濃度が高くなるプラントの停止時、起動時の制御棒動作時には、1次冷却材浄化流量を最大とし、クラッドの低減に努めることや、通常運転中にはクラッドの濃度測定、および適切な1次冷却材の浄化流量の管理を行うことについて、伊方発電所2号機の事象が発生する以前から実施しています。


※6: 制御棒駆動機構のうち、制御棒を固定および上下する際に、制御棒駆動軸をつかむ部位。
   
 
  海外(米国)の事例
  制御棒駆動装置設計メーカであるウェスティングハウス社が昭和52年に出した見解では、制御棒を数ステップ動作させることにより事象が解消するような制御棒の滑り落ち事象は、クラッドが制御棒駆動機構内に浸入したことが原因の偶発的な事象であるとしており、クラッド量低減のために、1次冷却材を浄化することを推奨しています。この見解は現在も変わっていません。
     
   以上より、今回の同種事象は、国内PWR(23基)では伊方発電所2号機の1件(〜現在)で、米国PWR(約60基)では約1件/年(平成2年〜18年)であり、稀なケースと考えられます。
 制御棒駆動装置内のクラッド量低減のためには、現在実施している浄化運転に加え、高温停止状態にて制御棒を動作させることにより、制御棒駆動装置内の水を、浄化運転によりクラッド濃度が低くなった1次冷却材と入れ替えることが有効と考えられます。
   
3. 健全性評価
   制御棒の機能で最も重要なことは、原子炉の緊急停止が必要な場合に、所定の時間内に制御棒が炉心に挿入されることですが、今回の事象では制御棒の挿入性に問題はなく、これらの安全機能は確保されていました。
   
4. 推定原因
   原因調査、および同種事例の調査結果などから、1次冷却材中に存在するクラッドが制御棒駆動機構の摺動部の隙間に入り込んで摺動抵抗が増加し、固定つかみ部の動作が遅れてツメが駆動軸の溝にかみ合っていない状態で可動つかみ部のツメを離したか、可動つかみ部の動作が遅れてつかみ方が不十分な状態で固定つかみ部のツメを離したこと等から、制御棒が自重で滑り落ちたものと推定されました。
   
5. 対 策
   今後の定期検査のプラント起動時に、従来から実施している低温停止状態における制御棒の全挿入・全引き抜き操作に加えて、新たに高温停止状態においても制御棒の全挿入・全引き抜き操作を行い、制御棒駆動装置内のクラッドの排出促進を図ります。また、次回定期検査までの間、運転中に行う月1回の制御棒動作確認試験で、停止グループバンクDのコイル電流波形を採取して、駆動機構がスムーズに動作していることを確認します。
 なお、制御棒動作波形観測装置を設置し、高温停止状態における制御棒動作確認時に電流波形を採取して動作時間を確認することで、駆動機構の動作影響状況を的確に把握していきます。

平成20年3月12日14日26日 お知らせ済み]




(2)安全協定の異常時報告事象
発電所名  大飯発電所3号機 発 生 日 第13回定期検査中
(平成20年3月18日)
件  名 所内電源喪失に伴う非常用ディーゼル発電機の自動起動について   (添付図2参照)
事象概要
および
対 策 等
 第13回定期検査中(平成20年2月2日〜)の平成20年3月18日16時8分、送電線から所内電源を供給するため投入されていた主変しゃ断器が開放し、所内電源が喪失するとともに待機中のB−非常用ディーゼル発電機が自動起動しました(A−非常用ディーゼル発電機は定期点検中)。
 主変しゃ断器が開放した原因を調査したところ、事象発生時に発電機窒素ガス封入装置の電磁弁の動作確認試験を実施しており、この試験において操作した窒素ガス封入スイッチにより主変しゃ断器が開放したことが判明しました。
 このため、同日16時40分に主変しゃ断器を投入し、所内電源を停電前(主変しゃ断器開放前)の状態に復旧しました。
 事象発生時、原子炉から燃料はすべて取り出されており、保安規定に定められた運転上の制限からの逸脱はなく、プラントの安全性に影響はありませんでした。
 また、環境への放射能の影響もありませんでした


  ※: 窒素ガス封入装置
発電機で火災が発生した場合、主変しゃ断器を開放して発電機を停止させるとともに、発電機内の水素ガスを排出するため、窒素ガスを発電機に注入する装置。


 当該動作確認試験について調査したところ以下のことが判明しました。

 発電機窒素ガス封入装置の動作スイッチを動作させると、主変しゃ断器の開放信号が発信するとともに電磁弁が動作する仕組みとなっています。このため、電磁弁の動作試験を行う際には、3号機では、しゃ断器の開放信号が発信しない同装置のテストスイッチを使用する必要がありました。
 しかし、当該電磁弁の動作確認試験作業要領書には、この「テストスイッチを操作する」との記載がなく、3号機の設備では該当しない「主変しゃ断器の開放信号を隔離する措置を行った上で窒素ガス封入スイッチを操作する」と誤った記載がなされていました。
 また、作業を実施した担当課員は、他プラントでの経験から窒素ガス封入装置の動作スイッチを使用して試験を行うものと思い込み、作業要領書等の内容を十分確認せずに操作を行っていました。
 さらに、作業要領書の内容が誤っていたにもかかわらず、具体的な作業計画書には正規の手順が記載されていたことや、作業に伴い作成する隔離明細書(スイッチや弁の状態表示票)の内容も誤っていたことなど、作業実施にあたっての所内でのチェック機能が不十分であったことが判明しました。

 対策として以下のとおり実施します。
 当該作業要領書の記載内容を、3号機の装置に応じたものに修正しました。また、現在実施している定期検査において、作業着手前に、作業要領書が3号機設備(装置)に応じたものになっているかについて再確認を行うこととしました。さらに、所長から全所員に対し、今回の作業ミスを周知するとともに、基本動作励行の再徹底やトラブル低減に向けた確実な取組みを強く指導しました。

平成20年4月7日 お知らせ済み]




(3)保全品質情報等
発電所名  大飯発電所3号機 発 生 日 第13回定期検査中
(平成20年4月8日)
件  名 原子炉容器Aループ出口管台溶接部の点検状況について   (添付図3参照)
事象概要
および
対 策 等
 大飯発電所3号機は第13回定期検査中であり、国内外で発生した600系ニッケル基合金溶接部での応力腐食割れ事象を踏まえ、原子炉容器出入口管台(計8箇所)の溶接部にウォータージェットピーニング工事※1を実施する計画としています。
 この工事のため、3月6日から3月10日にかけて、事前に当該溶接部内面の渦流探傷試験(ECT)※2を行ったところ、Aループ出口管台の600系ニッケル基合金溶接部1箇所で有意な信号指示(長さ約10mm)を確認しました。なお、Aループ入口管台およびB、C、D各ループの出入口管台については、有意な信号指示は認められませんでした。

 有意な信号指示が認められた部位を水中カメラにより詳細に点検したところ、傷の形状は複数に折れ曲がるとともに枝分かれした長さ約3mmの割れであり、美浜発電所2号機等の蒸気発生器管台溶接部で確認された1次冷却材環境下における応力腐食割れ※3と同様の特徴を有していました。また、傷の周辺では、引張応力が残留する可能性がある機械加工※4による仕上げ跡を確認しました。これらのことから、1次冷却材環境下における応力腐食割れの可能性が高いと推定しました。

 この部位について、超音波探傷試験(UT)※5を行った結果、傷の深さが評価できない非常に浅いものと考えられる信号指示でした。

 今後、当該部表面の研削、研削深さ測定、外観目視観察およびECTを繰り返し行い、ECTで有意な信号指示が確認されなくなるまで研削を行います。
 また、原子炉起動は4月下旬の予定でしたが、この作業に伴い6月上旬に変更します。


  ※1: ウォータージェットピーニング工事
金属表面に高圧ジェット水を吹き付けることにより、金属表面の引っ張り残留応力を圧縮応力に変化させる。
  ※2: 渦流探傷試験(ECT)
高周波電流を流したコイルを対象となる配管等に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物の欠陥に起こった渦電流の変化を電気信号として取り出すことで欠陥を検出する検査。
  ※3: 1次冷却材環境下における応力腐食割れ
1次冷却材環境下で600系ニッケル基合金に発生するPWRプラント特有の応力腐食割れ。(材料、環境および応力の3要素が重なって発生する割れ)
  ※4: 機械加工
溶接により発生する表面の凸凹を切除するとともに、管台とセーフエンド部の段差を無くすため、金属製の刃を周方向に回転させ切削加工すること。
  ※5: 超音波探傷試験(UT)
超音波を使って金属等の内部にある有害な傷を検出する検査。

以 上

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