プレスリリース

2005年3月22日
関西電力株式会社

大飯発電所3号機の原子炉手動停止に伴う点検状況について(原子炉格納容器内での1次冷却水の漏えい原因と対策)

 大飯発電所3号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力118万キロワット、定格熱出力342万3千キロワット)は、定格熱出力一定運転中のところ、3月7日15時50分頃、原子炉格納容器内の格納容器冷却材ドレンタンク室内に水溜りがあることを、定例の格納容器内点検中の運転員が確認し、1次冷却水である可能性が確認されたことから、原子炉を停止して漏えい箇所の特定や詳細な点検調査を行うこととし、3月7日、21時35分から出力降下を開始し、翌8日3時55分に発電を停止、同日 5時02分に原子炉を停止しました。
 その後、原子炉格納容器内の点検を行ったところ、格納容器冷却材ドレンタンク室上部にある、加圧器気相部の試料採取系統*1配管で、約1mの範囲において、保温材外面に、白い付着物(1次冷却水中に含まれるほう酸)を確認しました。
 外面観察を行った結果、配管の接続部(カップリング)において、溶接部に直径約1mm程度の微小な穴から漏えいが認められました。
 これらのことから、詳細に原因調査を実施することとしました。
 なお、本事象による環境への影響はありません。

*1: 加圧器気相部試料採取系統
1次冷却材系統の圧力や保有水量を一定に維持するために設置されている加圧器においては、急激な圧力変動に追従するため、液相部(液体部分)のほかに気相部(気体部分)を有している。このうち、気体部分の水素や希ガス濃度の測定や、停止時には1次冷却水の脱ガス(水素等の除去)操作においても使用する系統。

[平成17年3月7日、10日 お知らせ済み]



1. 調査結果
(1) 漏えい部詳細調査
当該漏えい部を切断し、試験施設に搬出して、詳細な原因調査を実施した結果は以下のとおりです。
当該漏えい配管の外観観察および浸透探傷検査(PT)を実施した結果、漏えいが確認された微小な穴以外に、有意な欠陥は認められませんでした。
微小な穴は、軸方向約1.2mm、周方向約1.0mmの大きさで、周りには溶接の重ね合わせ不足と推定される直径2mm程度の大きさのくぼみが認められました。
漏えい箇所の断面観察の結果、溶接部の内側に溶け込み不良による欠陥が認められました。
また破面観察の結果、漏えい部については、溶接の重ね合わせが不十分である上に、溶接金属の溶け込み不良があることが確認されました。その他に、漏えいの原因となるような破面の特徴は確認されませんでした。

以上のことから、今回の漏えいは当該配管のカップリングの溶接部において、建設時の現場での溶接施工時に溶接不良による欠陥が発生していたためと推定されました。なお、欠陥が貫通に至った原因については、破面観察などから特定には至りませんでしたが、解析により、起動停止等に伴う運転圧力の繰り返しによって欠陥が貫通に至る可能性があると評価されました。

(2) 溶接不良の原因調査
当該配管は小口径配管(外径約10mm)で、カップリングの厚さも約3mmと薄いため、当該カップリングの溶接においては、溶接トーチの角度や溶接速度の調整などで比較的慎重な作業を必要としていました。
また、当該溶接部は、壁や天井に非常に近く、特に漏えい部は壁側で溶接の起点にあたり、作業性が比較的悪いことが確認されました。
溶接施工性を確認するために、現場の状況を模擬したモックアップ試験を実施した結果、溶接作業を慎重に行わないと、溶接の溶け込み不良等が発生する可能性があることが確認されました。

2. 推定原因
 当該カップリングの溶接部において、当該配管が小口径配管で、現場も壁や天井に近く狭隘であり、溶接施工性が比較的悪かったことから、溶接施工時に溶接不良による欠陥が発生し、その後の起動停止等に伴う運転圧力の繰り返しなどによって欠陥が貫通し、漏えいに至ったものと推定されました。

3. 対策
 当該漏えい部を含め、試料採取系統の小口径配管のカップリング部122箇所について、今回の停止時に突き合わせ溶接構造(自動溶接)に取り替えます。また、その他の小口径配管のカップリング部についても、今後計画的に突き合わせ溶接構造(自動溶接)に取り替えます。

 上記の対策完了後、健全性を確認したうえで、3月26日に原子炉を起動し、翌27日には発電を再開する予定です。

以 上

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