プレスリリース

1998年8月11日
関西電力株式会社
株式会社前川製作所

夜間蓄熱利用凍結濃縮式排水処理・水リサイクルシステムの開発

 関西電力株式会杜(代表取締役杜長:秋山 喜久)と株式会社前川製作所(代表取締役社長:島賀 哲夫)は共同で、夜間に排水を凍結して濃縮減容するとともに純粋な氷を製造、蓄氷タンクに貯蔵し、昼間にはそれを解かしながら融解潜熱を空調やその他冷却に利用すると同時に、融けた氷は清澄な水としてビルや工場等の事業所内でリサイクルするシステムを開発した。

 従来、水資源の豊富な我が国において水は極めて安価な物の一つに数えられていたが、工業化と共に使用量の激増、また排水処理等の社会費用がかさみ、現在においてわが国は最も水の高価な国の一つとなっている。
 そのような中、本システムは事業所においては、氷蓄熱システムと排水処理システムを兼ねることにより設備投資を低減すると共に、使用される水の大半をリサイクルすることにより大幅な省水を可能にし、夜間蓄熱による電力負荷の平準化・電力の高効率利用を可能にするものである。そのため空調等、冷却のためのエネルギー費用で運転が可能で、しかも安価な夜間蓄熱料金が利用できるため、高い経済効果も得られるものである。

 これは、現在我々が抱えている水環境とエネルギーという大きな問題を、事業所を単位としたゼロエミッション化と熱の有効利用・省エネルギーを基本に、経済的な方法で解消し、持続可能な社会の実現を目指すシステムである。

 本システムは平成7年9月より開発を始め、このほど株式会社日本アーム(代表取締役社長:杉野 浩次)滋賀工場にモデルプラントを設置し運転に入った。本プラントにおいては、メッキ工程からの排水を上記システムによって処理し、氷の潜熱は、事務所の空調に利用される。

 今後は、特に排水量10m~30m/日の事業所に本システムを導入することによって水問題解決に大きく貢献できると同時に電力負荷平準化にも役立つと考えている。

以 上

【システム説明】
○原理等
 種々の物質が溶け込んだ水溶液を凍結すると、水自身は純粋な結晶となり不純物を何も含まない。冬期、土の中から立ち上がる霜柱が透き通ってきらきらと光輝く姿が象徴している。この原理を応用したのが凍結分離法である。しかしながら、結晶が小さいと結晶と結晶の間に不純物を取り込み分離が困難となる。本研究問発において株式会社前川製作所は、製氷における長い経験とノウハウを基にCOD数千ppmの排水を凍結することにより、60mm正方2000mmの大さな結晶を取り出すことを実現。融解後数ppmの水を回収することに成功した。さらに生産性に関しては冷却面からの氷の成長が20mm/40分と飛躍的に大きな数字を達成した。
 (従来の凍結濃縮においては、2~3mm/40分、氷蓄熱機においては40mm/10時間)
 これによりランニングコストとイニシャルコストを大幅に低減することができた。
○システム概説
 図に示すように本システムは主に、排水受け槽・凍結濃縮装置・蓄氷・放熱装置・小型排水処理装置によって構成される。排水はまず排水受け槽に流入し、夜間に凍結凝縮装置により、その70%~80%が純粋な氷塊として取り出され蓄水槽に蓄えられる。
 一方、濃縮された排水は排水処理装置に供給処理される。蓄氷槽の氷は昼間その融解熱を空調やプロセスの冷却に供給し、融けた後、清浄な氷として事業所内にリサイクルされる。
日本アーム滋賀工場に設置されたモデルプラント
日本アーム滋賀工場に設置されたモデルプラント
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