プレスリリース

1998年6月30日

波長多重伝送、光ソリトン伝送の現場実験に成功(OPGWを用いた光ソリトン伝送は世界初)

 関西電力(株)は、平成10年2月より当社、大黒部幹線OPGW(城端開閉所(富山県)~市荒川発電所(福井県)間:98.2 km)において、大容量光通信方式として現在世界各国で研究が進められている「波長多重伝送」および「光ソリトン伝送」の実験をおこない、OPGWを用いた現場実証試験に成功した。特に、OPGWを用いた光ソリトン伝送は世界初である。この成果は電力会社の既設の光通信線路を用いた大容量通信サービスの可能性を示すものである。

 情報化にともなう通信需要の増大に対応して、光通信の大容量化技術の開発が活発となってきている。大容量化には、複数のレーザー光に信号を乗せて多重化する「波長多重伝送」と、非常に短い光パルスを用いて通信をおこなう「光ソリトン伝送」の両面から研究が進められているが、従来は室内での実験が多かった。今回、当社は現場に敷設されている光ファイバ複合架空地線(OPGW)を用いて、これらの方式の有効性を実証した。 OPGWは鉄塔に敷設された雷対策用の架空地線内部に光ファイバを挿入したものであり、電力会社特有の設備として現時点では主に電力保安用に使用している。

 波長多重伝送については、80ギガビット(10ギガビット、8波多重)589キロメートル(城端開閉所~市荒川発電所間3往復)の伝送に成功した。これは光ファイバ複合架空地線(OPGW)を用いた光通信実験としては、伝送容量、距離ともに従来の記録を大幅に更新するものである。今回新たに開発した高性能光ファイバ増幅器を用いて信号の波長および強度を最適化することにより上記の記録を達成した。中継間隔が100キロメートル近い条件での現場実験は過去には例が無い。この成果は当社が敷設しているファイバ1芯当たりハイビジョン映像1600チャンネル、または電話120万回線に相当する伝送容量が得られる可能性を示したものである。

 光ソリトンは光ファイバの持つ非線形性(カー効果)を利用して、光パルスの安定化をはかり、チャンネル当たりの大容量化や長距離通信をおこなう技術であるが、非線形性を利用する方式であるため設計が難しく、現時点では実用回線には用いられていない。今回、世界で初めてOPGWを用いた光ソリトン伝送実験をおこない、10ギガビットで785km、40ギガビット(4波多重)で393キロメートルの伝送に成功した。新たに、光ソリトン伝送のシミュレーションコードを開発し、計算による予測通りの波長で最適伝送条件となることを確認したことで、光ソリトンの実用化に一歩近づいたものである。

以 上  

<参考資料>


プレスリリース