原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

2015年1月8日


第7回原子力安全検証委員会

 第7回原子力安全検証委員会では、「美浜発電所3号機事故 風化防止への取組み状況」、「原子力発電のさらなる安全性向上に向けた取組み状況」について審議が行われ、その結果をお知らせいたします。


1. 日 時 平成26年11月17日(月) 13時30分から17時25分

2. 場 所 関西電力株式会社 本店

3. 出席者(敬称略)

(委員長)
[社 外]  渡邉  一弘 (弁護士)
(副委員長)
[社 外]  代谷  誠治 (京都大学名誉教授)
(委 員)
[社 外]  安部  誠治 (関西大学教授)
[社 外]  岩崎  日出男(近畿大学名誉教授)
[社 外]  加賀  有津子(大阪大学教授)
[社 外]  橋詰  武宏 (ジャーナリスト)
取締役副社長
執行役員   生駒  昌夫
常務執行役員 勝田  達規

4.冒頭挨拶

 渡邉委員長挨拶骨子
  • ○美浜発電所3号機事故発生から今年の8月9日で10年を迎えた。この事故を契機に設置された本検証委員会は、このような事故を二度と起こさせないという考え方の下、その再発防止対策にとどまらず、原子力発電のさらなる安全性の向上を目指して関西電力がこれまでに行った、または今後、行おうとする原子力安全に関する多種多様な取組みに対し、中立的かつ客観的立場から、様々な意見を述べてきた。このことによって、関西電力の原子力安全に関する取組みが、独善に陥ることを防ぐ一助となり、またその取組みに様々な知見や気づきを与えることができたのではないかと考えている。
  • ○現在、関西電力は、原子力発電に関する新規制基準にとどまることなく、さらなる原子力安全を常に目指すことを会社の理念として据え、全社一丸となって取組もうとしている。このことは、先述した検証委員会の考え方と軌を一にするものであり、今後とも検証委員の発言は、関西電力の取組みの中で、ますます重視されることになるものと信じている。
  • ○本日の委員会における検証テーマは、「美浜発電所3号機事故の風化防止への取組み状況」、「原子力発電のさらなる安全性向上に向けた取組み状況」の2つだが、これらについて、「再発防止対策が実施されているか。」、「風化防止が取り組まれ、継続的な改善が図られているか。」、「ここまで出来たから安全であると考えるのではなく、どこまで安全性を高めても、まだリスクは残っていることを常に意識し、原子力発電の安全性を持続的に向上させなければならないとの考え方が浸透し、活動が実施されているか。」といった視点から検証する。各委員からは、専門的あるいは社会一般の眼から忌憚のないご意見、ご助言を頂きたい。

5.議事概要

5-1.美浜発電所3号機事故風化防止への取組み状況

 美浜発電所3号機事故再発防止対策の取組み状況について、総合企画本部から報告。

<報告内容等>
<意見等>
  • ○入社直後に新入社員に対し美浜発電所3号機事故に関する教育を行うことは大事であるが、それ以外の社員に対して繰り返し行うことも大切であると思う。(渡邉委員長)
  • ○美浜発電所3号機事故に関して、ライブラリや関係者の証言録など、きっちりとまとめたものができたと思う。事故を経験しているベテラン層であっても、今まで知らなかったことが出てくると思うので、これらのツールを活用して、もう一度、事故を見つめ直すような取組みも必要ではないか。(代谷副委員長)
  • ○本年度から新入社員を対象に美浜発電所3号機事故の研修を実施し、受講後にレポートを提出させているが、その言語情報から、研修のねらいと受講生の反応との関係を客観的に分析することも試みられたらどうか。(岩崎委員)
  • ○美浜発電所3号機事故風化防止のライブラリやツールは活用されないと意味がない。使用された人の声を拾って、より良いものにしていくことを継続的に取組んでほしい。(加賀委員)
  • ○美浜発電所3号機事故風化防止のための教育資料は非常に良く出来ている。せっかく良いものが出来たので、対象者を協力会社に広げるなど、より一層の充実を継続的に検討していただきたい。(橋詰委員)
  • ○時間の経過とともに風化させないためには、美浜発電所3号機事故の反省や教訓が自然に溶け込んでいくことが大事であり、文化とはそういうものだと思う。これまで通り、研修、会議や安全の誓いの日など、節目、節目で事故の反省や教訓を継承していく取組みを継続してほしい。(橋詰委員)

5-2.原子力発電のさらなる安全性向上に向けた取組み状況および監査結果について

 原子力発電所のさらなる安全性向上に向けた取組み状況について、総合企画本部から、また、同監査結果について経営監査室から報告。

<報告内容等>

<意見等>

(安全性向上対策)
  • ○今回の規制への対応により、発生頻度は低いが甚大な被害を及ぼすリスクの低減になっている。しかし、多様な耐震補強や防火対策が個別に実施され、また予備品の設置により、作業スペースが狭くなり、迅速な対応が必要な時にできなくなるといった事故のリスクが増える恐れもある。トータルで安全を判断する全体的なマネジメントが非常に重要である。(代谷副委員長)
  • ○高浜発電所の視察において、電源対策や火災対策については、空間に余裕が無いほど設備が追加されているように感じた。新しい規制との関係もあると思うが、次々と設備を追加することにより、かえって全体の安全性を低下させることもありうるのではないか。全体のバランスを崩さずに適切であるかといった視点でも見てほしい。(安部委員)
(リスクマネジメント)
  • ○「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実」資料において、原子力に関するリスクマネジメント充実策の一つとして、既存のリスク管理委員会の下部組織として「原子力部会」の新設や、原子力事業本部における安全性向上に向けた基盤整備の一つとして、原子力事業本部に「原子力安全部門」を新設した旨、記載されているが、従来から関西電力は原子力リスクに対して全く取り組んでいなかった訳ではなく、例えば「リスク管理委員会」である程度取り組んでいたと思うので、その点を補足説明した方が、誤解を生まないのではないか。(渡邉委員長)
  • ○国のワーキンググループで言われている「リスクマネジメント」とは「良くガバナンスを効かせて、放射性物質放出リスクを洗い出し、当該リスクを限りなく小さくすることを求める」という概念であると思うが、この言葉だけが一人歩きすると、一般の方には、従来、企業等で言われていた「リスクマネージメント」すなわち「リスクを単純にマネジメントする。(コストとパフォーマンスを両天秤に掛け、リスク対策の実施の是非やレベル感を判断する。)」との意味と同様に受け止められ、誤解を招く恐れがあるので注意が必要である。また、現時点で、新聞等では「あらゆる原子力リスクゼロが目標である」という論調が主流に思えるが、そのような視点から見た場合、この「リスクマネジメント」の考え方が「原子力安全に関する取組み姿勢が後退した」という誤解を招く恐れもあることにも注意が必要である。(渡邉委員長)
  • ○現時点としては、「自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の方向性は妥当なものだと思うが、確率論的リスク評価(PRA)の活用に関連して、過去に前例のない事故に対してPRAが果たして有効なのか、福島原子力事故以降、ずっと疑問に思っている。ハインリッヒの法則でも、千年に一度といった事故については説明できない。過去に前例のない、いわゆる想定外のリスクに対してPRAを有効に活用するのは難しいと考えており、今後の大きな課題だと思う。(安部委員)
  • ○安全対策がシステム全体の中で最適になっているかを評価するためには、網羅的に原子力安全のリスクの構造化(トップリスクをリスクという視点で上位から下位へ展開する)を行い、どのリスクを回避しようとしているのかを明確にすることが必要である。(岩崎委員)
(安全文化醸成活動)
  • ○(より一層強固な安全文化の構築に向けた取組みに関するご意見に関連して、)理想である「あるべき姿」に関西電力が近づく努力を続け、その「あるべき姿」に近づいてくれば、そこから見える周りの風景が変わり、理想とする「あるべき姿」も高められてくると思う。その新たな「あるべき姿」の実現に向けて、さらに努力を繰り返し繰り返し続けていくことがより一層強固な安全文化構築への取組みだと思う。(渡邉委員長)
  • ○社長のコミットメントを強調するとトップダウンが強調されてしまう。安全文化はトップダウンだけでは構築できるものではなく、基本は、ボトムアップの動きがないと構築できないものだと思っている。安全文化とは考え続けることであり、これで良いと思った途端に崩壊する。安全文化の状態に形などはなく、どんどん作り上げていくものであるが、その際にはボトムアップの行動が伴わなければならない。トップダウンの行動ばかりが大きくなるとバランスを崩して倒れてしまうので注意すべきである。(代谷副委員長)
  • ○原子力に従事している者の中で反省しなくてはならないことは、 安心、信頼を得るために原子力安全神話を作り上げてしまったことである。その轍は二度と踏まないという心構えで安全を推進してほしい。(代谷副委員長)
  • ○社達「原子力発電の安全性への決意」により、会社として「放射性物質を外部に放出するリスクがあること」を明記したのは良いことである。このようなリスクを認めてこなかったことが、社会とのリスクコミュニケーションを困難にしていたと思う。社達「原子力発電の安全性への決意」の精神をいかに全社的に浸透させていくかということが非常に大事であり、しっかりと取り組んでほしい。(安部委員)
(コミュニケーション)
  • ○協力会社に対しては、アンケート等で、関西電力の安全文化構築に対する取組みについて評価していただくことなどを通じて、関西電力の安全文化醸成活動に関する理解は比較的進んでいると思われるので、協力会社から関西電力に対する意見は、活動そのものに対して、しっかりとしたものとなっているのだと思う。他方、消費者に対しては、協力会社に比べ、関西電力の取組みが十分に伝わっていないのではないか。そのため、両者の意識には大きい差があるのだと思う。関西電力は、両者の意識を完全一致させるのは難しく、大変だが、その意識の差を埋めるよう繰り返し努力することは必要と思う。そのためには、関西電力の取組みの説明も、一様ではなく、説明の内容を工夫し、相手の立場を考えた分かりやすい内容とすることも必要ではないか。(渡邉委員長)
  • ○「リスクコミュニケーション」という言葉を使っているが、厳密には「リスクマネジメント・コミュニケーション」だと思う。具体的には、「原子力にはこういうリスクがありますが、ご理解ください。」ではなく、「原子力のこういうリスクをこのようにして限りなく小さくするよう取組んで管理していますが、皆さんの眼から見て、抜け・漏れ・不足がありますか。」という観点でコミュニケーションすることかと思う。(渡邉委員長)
(立地地域住民の関心)
  • ○立地地域等の住民が、原子力リスクに関して一番に考えていることは、原子力発電所の事故で放射性物質が外に出ることであり、それによる避難や健康への影響だと思う。このことを強く認識して、今後も、原子力発電の安全性向上に取り組んでほしい。(橋詰委員)
  • ○(事故時対応能力の向上に関連して、)地域住民にとっては、設備面の充実は当然であるが、責任を持って事故収束に対処できる人材がいるかどうかに関心がある。また、実際の事故時は訓練通りにはいかないこともあると思うが、地道に訓練を継続してほしい。それらのことにしっかりと取り組んでいることが分かれば、地域住民も安心するのではないか。(橋詰委員)
(原子力安全推進委員会)
  • ○原子力安全では、リスクがあることを認めることが基本となり、そのリスクにどう対応するかを考え、その方策をどんどん進めることが原子力安全の推進になると思う。原子力安全推進委員会で、様々な専門の立場から議論することは非常に重要なことであり、安全文化の出発点に立ったという気持ちで進めてほしい。(代谷副委員長)
  • ○原子力安全推進委員会において、信頼回復を議論する場合には注意が必要である。信頼回復は安心をもたらすことであるが、安心と安全は違うものである。信頼回復のことを議論すると相手に安心してもらうことに議論が行ってしまう。一方、安全への取組みは危険に向き合うことであるので、委員会で議論する時には、そのことを意識して議論した方が良い。安全の取組みについては、「こういうリスクがありますから、我々はこのようにしてそのリスクを低減しています。」までしか言えない。信頼を回復するために、「我々がもう取り組んでいるので安心してください。」と言い続けていると、言っている方が安心してしまう場合があり、自分が安心してしまうと、安全について考え、取り組むことが止まってしまう。安全に関する委員会の議論が、安心してもらうための議論となり、結果的に安全文化の崩壊につながりかねないということに留意すべきである。(代谷副委員長)
  • ○原子力安全推進委員会と同部会が、原子力部門の課題やありたい姿とのギャップをどのように吸い上げ、それにどう対応していくのかを明確にしておくべきである。(岩崎委員)
  • ○原子力安全推進委員会は関西電力にとって重要な会議であり、主要な審議結果等については、委員会関係者だけでなく社内全体でも情報共有し、社内での理解をさらに深めることも大事ではないか。(橋詰委員)
(安全対策等の取組み状況に関する監査)
  • ○安全対策等の取組み状況に関する監査においては、創意工夫している事例の結果だけを評価するのではなく、どのようなプロセスを経てそのような創意 工夫に至ったのかというストーリを監査することも検討してほしい。(岩崎委員)
(原子力安全検証委員会への報告)
  • ○「原子力発電の安全性向上に向けた自主的かつ継続的な取組みのさらなる充実(ロードマップ)」の中で経営トップのガバナンスについては、仕組み・内容を継続的に改善することになっているが、この点については、原子力安全推進委員会等で議論された内容を原子力安全検証委員会でも報告いただきたい。また、社達「原子力発電の安全性向上への決意」の浸透やその評価についても報告いただきたい。(渡邉委員長)

5-3.検証委員から頂いたご意見を踏まえた取組み状況について

 検証委員から頂いたご意見に対する取組み状況について、原子力安全推進委員会事務局から報告し、審議・了承。

<報告内容等>
<意見等>
  • ○地域の方々のご意見等の中には、関西電力の安全文化に関する評価も入っているので、それを見落とさないようにすることが重要である。(代谷副委員長)
  • ○発電所施設の安全に対する責任は一義的に関西電力にあるという意識を持つことが重要であり、国内外情報のスクリーニングにおいても、関西電力が全責任を持つという意識で取り組まなければならない。得てして、重要な情報というのは、スクリーニングを経て整理された情報の中にではなく、背景情報、参考情報等に含まれているものなので、効率よくそれを拾い上げることができるように工夫してほしい。(代谷副委員長)
  • ○所長をサポートする参謀役として原子力安全統括を配置されたが、その効果を評価して、参謀役として、どういう人材が必要か、組織的にフォローしていくことが必要である。色々な視点で、全体を俯瞰する人材には、どのような人的な素養が必要かを見ていくことが大切である。(加賀委員)

5-4.次回検証委員会について(平成26年度 検証計画(案)について)

 平成26年度検証計画変更案について、経営監査室から提案し、審議。

<審議結果>
  • ・平成26年度検証計画変更案について了承。
  • ・平成26年度の検証テーマと検証の視点については変更なく、了承。
検証テーマ 検証の視点

美浜3号機事故の風化防止への取組み状況

  • ・再発防止対策が実施されているか。
  • ・風化防止が取組まれ、継続的な改善が図られているか。

原子力発電のさらなる安全性向上に向けた取組み状況

  • ・ここまで出来たから安全であると考えるのではなく、どこまで安全性を高めても、まだリスクは残っていることを常に意識し、原子力発電の安全性を持続的に向上させなければならないとの考え方が浸透し、活動が実施されているか。

渡邉委員長、代谷副委員長
渡邉委員長、代谷副委員長

第7回原子力安全検証委員会の様子
第7回原子力安全検証委員会の様子

 

以 上

<参考資料>
越前若狭のふれあい 特別号

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用語解説

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