やっと素直に泣けました

ある日、関西電力の営業所、佐藤の元に、一通のハガキが届きました。
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先日、離れて暮らす父が亡くなり、電気の解約でお電話した者です。
あのとき対応していただいた方に、もう一度お礼をお伝えしたく、ペンをとりました。

父の死は突然でしたので、悲しむ暇もないまま、通夜、告別式と、あっという間に日々が過ぎておりました。
ようやく落ち着いたのは、父の死から10日ほどたった頃でしょうか。
独り暮らしの父の部屋を片付けに行き、そこで電気の解約のお電話もしました。
そうしたところ、手続きの方法について、分かりやすく丁寧に教えていただいたのです。
私の心情を気遣ってくださるようなやさしい口調で、私は恐縮してしまったほどです。
そして最後に担当者の方は、こうおっしゃってくださいました。
「今まで長きにわたりご利用いただき、本当にありがとうございました」と。

私はこの言葉を聞いて、初めて父がこの部屋で生活していた日々に思いをはせました。
グラスを片手にレコードを聴く父、ビールを飲みながら武勇伝を話す父、笑いあった頃の姿。
父は確かに、この部屋で暮らしていた…。
そして私はようやく、泣くことができました。
張り詰めていた気持ち、つっかえていた想いがすべて溶け出すように、私は涙を流すことができたのです。
素敵な言葉をかけていただいて、ありがとうございました。心から感謝しております。
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この手紙は今も、佐藤のデスクに大切にしまわれています。



掲載されている物語は実際の活動や出来事を元にしたものです。
登場人物は全て仮名です。

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